英語教育に関するニュース

アレン玉井先生1

幼児・児童の英語教育のスペシャリストである青山学院大学文学部教授のアレン玉井 光江先生。
アレン玉井先生が開発されたアレンメソッドという英語教育法は都内の多くの小学校の英語授業でも取り入れられています(※1)。
例えば、アレンメソッドの一つ、Story-Based Curriculumでは、多くの子供たちが知っている昔話をStorytelling (お話)した後、Joint Storytellingという活動で、物語を会話風にしたリズミカルな英語をジェスチャーとともに教えていきます。オリジナル教材を用い、子供たちはストーリーの読み聞かせを楽しんだのち、Joint Storytellingで先生の英語をリピートして、学習をすすめる英語指導法です。
そんなアレン玉井先生に、子供たちが英語という言葉を自分のものにするためには、どんな学習法やサポートを取り入れていくべきか伺いました。

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Q1. Joint Storytellingという手法はどのように開発されたのですか?

Q2. Joint Storytellingを使う時、低年齢の子供はどのように英語を理解しているのでしょうか?

Q3. なぜ英語のお話を日本語に訳さなくていいのでしょうか?

Q4. どのくらいの時期から英語を始めるのがベストでしょうか?

Q5. これからの時代はどんな英語力が求められるのでしょうか?

Q6. 英語嫌いにさせないために、幼児期から家庭でできることはありますか?



Q1. Joint Storytellingという手法はどのように開発されたのですか?

低年齢の子供に最適なJoint Storytelling

私はアメリカでの修士課程で、TESL & TEFL(※2)と呼ばれる外国語教授法を学びました。
そして、帰国し、大人に英語を教えるとともに幼児や児童に英語を教え始めました。
その後、現在まで幼児・児童英語教育に携わり、37年のキャリアになります。
最初の25年くらい様々な試行錯誤をしてみた中で、Joint Storytellingという手法が子供たちにいちばんしっくりきました。
Joint Storytellingは、昔話などのお話にジェスチャーをつけて、わかりやすく英語を導入し、児童は先生の後について英語を言いながら学習していく活動です。

幼稚園児から小学校2年生くらいの子供たちは、まだ自分と他人との区別もはっきり理解できていません。ピアジェ(※3)の発達段階でいうところの「前操作期」にあたる子供たちは、現実の世界と仮想世界をまだはっきりと区別しません。この時期の子供たちに『赤ずきん』を読んでいると、みな自分が赤ずきんちゃんになりきってしまったりします。
そのような想像力が豊かな子供たちには、教科書に出てくるような会話より、みんながよく知っている物語から英語に出会うほうが英語を育てていくうえでよほど大きな力になります。
それに物語には、人間の知恵がたくさん詰まっています。
また、言語習得の初期段階では、ジェスチャーはたいへん有効です。
Joint Storytellingでも、アメリカ英語のサインランゲージ(※4)を使いながら物語を聞かせて、リピートさせるようにしました。

※2 TESL & TEFL:
TESLとは、Teaching English as a Second Languageの略称。英語を母語とする国で、英語が母語でない学習者などに英語を第二言語として教える英語教授法。
TEFLとは、Teaching English as a Foreign Languageの略称。英語を母語としない国で、英語を外国語として教える英語教授法。

※3 ジャン・ピアジェ(Jean Piaget):
スイスの心理学者。子供の思考(認知機能)は、以下の4つの段階を経て発達していくと提唱した。
①感覚運動期(0~2歳)... 感覚と運動が表象(心的イメージ)を介さずに直接結びついている時期。動作や表情などの模倣行動が発達する。
②前操作期(2~7歳)...心の内面に表象を作り上げることができるようになる。他者の視点に立って理解することはまだできず、自己中心性の特徴を持つ。
③具体的操作期(7~11歳)...数や量の概念を把握し、物の見かけが変わっても数や量や数は変わらないという、保存性の概念が理解できる
④形式的操作期(11歳〜)...抽象的な思考や仮説を立てた思考ができるようになる。

※4 サインランゲージ:手話など音声言語の代わりに指、腕などの身振りを用いること。

紙芝居

Storytellingを使って母語教育を行っているアメリカの小学校の先生とお話好きの子供たち

在外研究中のアレン玉井先生と共に(2015年)


Q2.Joint Storytellingを使う時、低年齢の子供はどのように英語を理解しているのでしょうか?

和訳しないストーリーテリング

Joint Storytellingの大きな特徴は、英語を日本語に訳さないことです。
それでも子供たちはストーリーを理解し、物語を覚え、そらで言えるようになります。

例えば『赤ずきん』のJoint Storytellingなら、
Little Red Riding Hood, listen to me well.(赤ずきんちゃん、聞いてください。)
Yes, mother. Yes mother. I am listening.(はい、お母さん。はい、お母さん。聞いています。
Your grandma is sick. Please go and see her.(あなたのおばあちゃんは病気です。お見舞いに行ってあげてください。)
Yes, mother. Yes, mother. I will go and see her.(はい、お母さん。はい、お母さん。お見舞いに行ってきます。※5
と歌うようにリズミカルに言います。

子供たちは先生のジェスチャーを真似て一緒にリズムを取りながら発声しますが、その際、日本語に訳しません。
また、"go"とか"see"などの動詞を言う時は、アメリカンサインランゲージから応用したジェスチャーを交えます。
最初は子供たちは何を言っているか分かりませんが、Joint Storytellingを続ける中で、「分かった」と言い始める時がきます。

それは日本語に逐語訳されたような理解ではなく、なんとなく"grandma"は「おばあちゃん」で、"sick"というのは「具合が悪い」という意味なのかな、と理解する感じです。
もともと日本語でお話を知っていることが、英語だけでの理解を助けてくれるのです。

※5 『ストーリーと活動を中心にした小学校英語』(2011、小学館集英社プロダクション)p. 74

アレン玉井先生2


Q3.なぜ英語のお話を日本語に訳さなくていいのでしょうか?

パーシャル・ラーニング(部分的な学習)でも応用ができる

英文とそれに対応した日本語をいちいち理解していくことには、分析的な理解力が求められるので、幼少期の子供にとってはまだ困難です。
限られた授業時間数内で、できないことを一生懸命教えても、子供はいやになってしまい、教わったことが残りません。
それよりは子供の発達に応じて、子供たちが得意なやり方で英語にふれる方が良いのです。

例えば『3匹のクマ』というお話に、女の子が「お腹がすいたから食べたい」というシーンがあります。このシーンの
I am hangry, very hungry. Look over there.(私はお腹がとても空きました。あそこを見て。)
I can see some porridge. I'll go and eat it.(おかゆが見えます。食べましょう。) ※6
という文章を覚えた子供たちが給食の時間に、
I am hungry, very hungry. Look over there.
I can see some curry. I'll go and eat it.(カレーが見えます。食べましょう。)
と自然に使い始めたことがありました。

この時、子供たちは、文法的にみて、英文の意味を必ずしも全て理解しているわけではありません。でも自分の言葉として使い始めていました。
完全ではなくても、なんとなく理解し使っているこの状態を、私はパーシャル・ラーニングと呼んでいます。
Joint Storytellingの授業の中では和訳を教えませんが、子供たちはストーリーやジェスチャーから、何となく英文の意味を把握していきます。そうした部分的な理解でも、英文を適切な場面で活用することができるのです。

※6 『Story Trees 2』(2014、小学館集英社プロダクション) p.55


同じ言葉を繰り返すことでランゲージ・オーナーシップ(言葉の所有権)を獲得できる

また、昔話には繰り返しがたくさんあります。
例えば『大きなカブ』なら、おじいさん、おばあさん、孫、犬、猫と、次々にキャラクター出てきて、みな同じ台詞を言いますよね。
こうしたストーリーをJoint Storytellingの授業で使うと、子供たちはキャラクターになり、繰り返しを楽しみながら、だんだん英文の意味を理解していくことができます。

さらに、先生といっしょに同じ言葉を繰り返しリピートしているうちに、子供たちに英語を言う力が身についていきます。

先生がしだいに口パクになっても、子供たちは自分の力だけで言うことができ、いつしか1人でも英文の意味を子供なりに理解して話せるようになっているのです。
このように言葉が自分のものになった状態を、私はランゲージ・オーナーシップと呼んでいます。

アレン玉井先生4


Q4.どのくらいの時期から英語を始めるのがベストでしょうか?

言語習得は総学習量で決まる!

早期英語教育に関しては色々な学説がありますが、言語習得にはたくさんの時間が必要なのは確かです。

例えば、子供が成人したときに英語が使える状態を目指すと仮定しましょう。
毎日英語だけを何時間も学習できるのであれば、中学校からでも遅くないかもしれません。しかしながら、当然他の教科も学習するわけですから、そうはいきませんよね。
言葉を身につけるためには、ある程度の学習量は絶対に必要です。
必然的に未就学児や小学校などの早い時期から学習を積み重ねることが、総学習量を増やすことにつながります。

そもそも、ピアジェの発達段階の「形式的操作期」に入る前までの児童は認知的にまだ未熟です。11歳頃以降の「形式的操作期」に入った子供は抽象的な思考や仮説を立てた思考ができるようになりますが、それよりも以前の段階では、他言語を分析的に理解し、自分の中に構築していくのは難しく、時間がかかります。
そういう時期の子供に英語の授業を行う場合、長時間の授業で知識をまとめてインプットしようとしても、その多くが流れ出ていってしまう可能性があります。60分の授業を週1回行うよりは、1回15分の授業を4日に分けて行うように、少しずつ積み重ねていくやり方の方が良いでしょう。

また、英語の読み書きを始めたときに自分で英語の文字と発音が結びつけられるように、子供の頃に素地をしっかり作っておいてあげることも大切です。


Q5.これからの時代はどんな英語力が求められるのでしょうか?

「知っている」ことより「どれだけ使えるか」

日本社会のグローバル化が進む中、これからの日本の英語教育は、英語を「知っている」ことではなく「どれだけ使えるか」が重要になってきます。
そして、子供が英語を使えるようになるためには、やはり先生や親という大人もいっしょに汗をかいていただきたいと思います。

親にも覚悟が必要!

今、世界の多くの国の親たちは、英語教育に必死になっていると感じます。
例えば、インドのニューデリーでタクシーに乗ったとき、運転手さんが「親である自分たちは小学校も出るか出ないかだけど、息子はイングリッシュイマ―ジョンスクールに通っている」とキラキラしながら自慢げに話していました。
英語を身につけさせてやることが親の当然の役目だと思っていて、それが息子さんの将来に直結すると固く信じているんですね。

日本にはまだそこまでひっ迫した雰囲気はありませんが、そのことに危機感を覚えます。
やるのであれば、やはり親にも「子供に英語を身につけさせる」という強い覚悟が必要だと思います。

アレン玉井先生3


Q6.英語嫌いにさせないために、幼児期から家庭でできることはありますか?

親子でいっしょに楽しむ

子供に何をやらせるにしても、やらせっぱなしはいけません。
英語を身につけてほしいなら、子供といっしょに親も英語の音を聞きましょう。
その時、「ここなんて言っているのかな?」「いまうさぎさんがこんなこと言っていたね」などと明るく楽しく話しかけてあげると良いでしょう。
逆に、「もう時間がないんだから、早くやりなさい!」というような言葉をかけてしまったら、子供にとって英語にふれる時間が苦痛になってしまいます。

子供と一緒に英語を楽しむためには、親も好きになれる、思い入れのある教材を使用するのが良いと思います。
例えば、家族でディズニーランドに行った思い出が心に残っているなら、そこでの思い出と結びつけられる教材が使いやすいでしょう。ディズニーランドで出会ったキャラクターと教材に出てくる英単語や英文を関連づけたりすると、より身につくと思います。
ママやパパが喜んでいることは、子供にとっても嬉しいことです。親が英語を楽しんでいれば、子供も英語を楽しむようになります。
親も子供といっしょに英語教材を使いこなしましょう。


インタビューを終えて

アレン玉井先生の開発されたJoint Storytellingは子供の思考の発達段階に合わせて生まれた英語学習法なんですね。
Joint Storytellingの中では、段階を踏んだアウトプットの繰り返しやジェスチャーが活用されていますが、子供たちが英語を自分の言葉にするために、こうした工夫は非常に有効なようです。

また、子供が英語を身につけるために、親は非常に大きな役割をもっていることも実感させられました。
親が強い意志をもって楽しい英語学習環境を作っていくことが、これからの時代の子育てではますます求められていきそうです。


アレン玉井先生_プロフィール

プロフィール:アレン玉井光江(アレンタマイミツエ)

青山学院大学文学部教授。教育学博士。
米国のNotre Dame de Namur UniversityでB.A.in English(英語学部学士号)を取得後、San Francisco State University大学院英語研究科でM.A. in TESL/TEFL(英語研究科外国語教授法専攻修士号)を取得。その後、Temple UniversityでDoctor of Education(教育学博士号)を取得。
専門は幼児・児童英語教育と第二言語習得。日本児童英語教育学会(JASTEC)理事、小学校英語教育学会(JSE)研究推進委員。
中学校英語教科書『New Horizon1,2,3』の編集委員であり、『小学校英語の文字指導―リタラシー指導の理論と実践』(東京書籍)、『ストーリーと活動を中心とした小学校英語』(小学館集英社プロダクション)、『小学校英語の教育法―理論と実践』(大修館書店)、『幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組み-ECF-』(共著・リーベル出版)など多数の著書がある。

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