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未就学児から英語を勉強したら、英語以外の力ものびる?【玉川大学大学院 名誉教授・佐藤久美子】

未就学児から英語にふれて学習していると、全く学習していない子供と比べて、英語の語彙力や、同じ発音・表現などをくり返す反復力はもちろんのびます。
その一方で、英語を勉強することで、英語以外の力は英語にふれている子といない子でどういった差が出るのでしょうか?今回はこうした英語以外の力についてお話しします。

英語力以外にのびる5つの力

1. 集中力が高まる

0歳児から英語を学習した子供(有名英語教材使用群 平均43.67カ月)と、特に英語を学習していない子供(control群 平均47.82カ月)の、英語(既知語及び未知語)と日本語(未知語)の反復調査を個別に対面で行いました(佐藤2014年)。

図1子供の英語反復力

1.子供の英語反復力

* p < 0.01
two way-ANOVA
既知語,未知語にかかわらず 

図2子供の日本語反復力

2.子供の日本語反復力

*p < 0.05
un-paired t-test t=3.09

図1、図2からわかる通り、英語のみならず、日本語の単語の反復力も、0歳児から英語学習をはじめた子供は高いことがわかります。その理由は何でしょうか。

理由として、2つの可能性があります。
① 英語という慣れない言葉をしっかり聞くことで、集中力が高まる。
② 必要な情報を検索するスピードが速くなる。

日本語は、例えば「かがみ」の語順を変えて「みかが」、「まねきねこ」の語順を変えて「ねきねこま」というような未知語(擬似語)を与え反復テストをしますが、実は音を反復するときには、長期記憶の中に蓄えられている日本語の音声配列などの情報を検索することが求められます。英語学習の反復を通して、日本語の情報検索のスピードも速くなる可能性があります。

単語の反復だけではなく、英語教材をしっかり聞いて意味を理解しようとしたり、まねをして歌を歌おうとしたりする作業は、集中力の発達につながると考えられます。

2. 推測力がつく

例えば中学生になると、英語のレベルが上がり、文章の量が増え、英語を100%聞き取ることが難しいと思われる時期が来ます。しかし、内容を推測して理解する力をつけておけば、少々単語の意味がわからなくても、安心して聞き取ることができます。

未就学児の頃から英語を学習した子供は、わからなくても聞いていればいつかわかるようになる、という気持ちが芽生え、小学校高学年や中学生になっても、落ち着いて、自信をもって聞き取ることができます。さらに、この英語学習を通して身につけた推測力は、国語の読解力にも通じます。

そもそも、小説やエッセイには、作者の気持ちや状況はすべて書かれていないものです。書かれていたら、読んでいてつまらないからです。これを推測しながら読むことで、楽しみも増えます。

3. 記憶力がのびる

3.	記憶力がのびる
短期記憶の一部であるワーキングメモリー(情報の保持と処理を可能にし、同時に2つの作業を達成するシステム)は2歳頃から発達するといわれますが、音を反復するという力は、このワーキングメモリーがかかわります。

すなわち、音を聞いてその音を一時的に保持し、かつ、長期記憶の中に蓄えられている音を探し統合するシステムを使い、音を発生するからです。英単語の反復をくり返し行うことで、このワーキングメモリーが鍛えられて、日本語の反復力も上がる可能性があります。

また、このワーキングメモリーは、算数の繰り上げのある計算などでも使われる力です。3桁プラス3桁の計算をするときに、1の位が7と8ならば、⒖となり、繰り上げる1を一時的に記憶しておく必要があります。ここでワーキングメモリーの力が発揮されます。

また、物語の中に、いろいろな登場人物が出てくると、その名前を覚えておく必要がありますが、これを記憶するときも、短期記憶の力が必要なのです。

英語の反復を通して鍛えられるワーキングメモリーの力は、他教科にも役立ちます。

4. コミュニケーション力がつく

小学校で英語を学習する目標の1つに、「自分の考えを伝える力、相手の話を理解できる力」の育成があげられています。日本語、英語という言語に限定することなく、コミュニケーションの力は生きていく上で大切です。

小学校ではさまざまな教科を通して、このコミュニケーションの力を養い、また、発揮する場面があるでしょうが、皆がわからない言葉=英語を勉強するときは、より理解してもらおう、理解してあげよう、という努力が必要になります。

小学校では、eye contact(目を合わせて)、clear voice(明確に話しかけ)、smile(笑顔で伝え)、challenge(チャレンジ精神を発揮して)スピーチをしよう、と教えられますが、まさしく英語を話そうとするときに、子供たちはこうしたコミュニケーションの態度を意識します。
英語の学習を通して、「人前でも堂々と話せる力、発表力が育まれる」と考えられます。

5. 主体性が身につく
5.	主体性が身につく
特に英語は、毎日継続して学習することが不可欠です。そこで、教室だけではなく、家庭学習を通して、自学自習で学ぶ力が育まれるのです。

小学校も高学年になると、Webで外国語の食べ物や気候、観光地などを調べて、タブレットに写真を貼ったり、紹介文を書いたり、友達に発表する授業が行われています。子供たちは、この調べ学習、発表を好んで行います。それは、友達が知らないことを伝えよう、驚かせよう、楽しませよう、などという動機につながるからです。
さらに、グループでいっしょに活動する、「共学」の楽しさを味わうこともできます。

近年、タブレットを自宅にもって帰ることができる市区町村が増えたお陰で、自宅でタブレットを使って英語を復習することもできます。多くの子供たちはタブレットを扱うことを楽しんでいます。毎日、自宅でタブレットに向かい、習った英語を書いてみる、さらに外国の文化や音楽などを調べてみることを習慣化することで、楽しんで学習することができるでしょう。

学習は、主体的に楽しく行うことで身につきます。

英語の学習を小さい頃からはじめることで、英語力がのびるだけではなく、他の力ものびる可能性があると思います。ぜひご家庭でも、保護者の方たちもごいっしょに英語を楽しみながら、子供たちの潜在力をのばしていただければと思います。


佐藤 久美子先生(さとう くみこ)先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻)名誉教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの『えいごであそぼ』『えいごであそぼwith Orton』の総合指導、2017年からNHK eテレ『エイゴビート』の番組委員を担当、今日に至る。全国の小学校や教育委員会でも多数研修や講演を行い、小学校英語教育の推進に努めている。

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