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小さな子供との会話が活性化?ネイティブがよく使う句動詞をご紹介!【英語教育コンサルタント・光藤京子先生】

みなさんは「句動詞」(phrasal verbs)という言葉をご存じですか?たとえばpick up/get in/go back toなどのように、動詞に副詞や前置詞を組み合わせてセットで使う動詞表現を指します。

ネイティブが日常生活で使う句動詞はとてつもなく数が多く、ノンネイティブには習得が難しいといわれています。しかし、句動詞に使われる動詞はgo/get/put/takeなどの基本動作が多く、後に来る副詞や前置詞もupやdown、inやonのように簡単なものばかりです。

副詞や前置詞は、それらがもつ本来の意味や雰囲気(イメージ)を幼いときに身につけておくと、大人になってからの学習がずっと楽になります。

今回はそれらの副詞や前置詞を含み、小さなお子さんもいっしょに楽しめるやさしい句動詞をいくつかご紹介しましょう。

そもそも句動詞はどうしてできたの?

そもそも句動詞はどうしてできたの?

11世紀はじめ、当時のイングランドにフランス語を話すノルマン人が大勢やって来ました。「ノルマン人の征服」と呼ばれ、彼らがイングランドを統治した300年の間に、大量のフランス語が英語に流入したといわれています。

当時、上流階級ではフランス語、庶民のあいだでは英語が話されていました。なかでもとくにラテン語由来の難しいフランス語は、やさしくかみ砕いた英語にする必要がありました。それが句動詞の誕生と発展の1つのきっかけになったといわれています。その後、便利さ、使いやすさゆえに句動詞は増え続け、現在のように日常生活で大量に使われるようになりました。

ネイティブの日常会話は句動詞だらけ?

SNSの動画で、小さな女の子がトイレの便座の上げ下げについてこんな発言をしているのを耳にしました。以下の発言の中で、Youは彼女のお父さん、meは少女自身です。

"You ask me to lift the seat up, but you need to put it down for me."

lift(またはput) the seat upは「便座を持ち上げる」、put it(the seat) downは「便座を元の位置に下げる」という意味です。
要は、「お父さんは(用を足し終わったら)私に便座を上げろと言うけれど、(お父さんが用を足し終わったら)私のために便座を下げてね」と訴えている場面でした。つい微笑みたくなる可愛らしい発言ですが、lift(またはput)+副詞up、put+副詞downの組み合わせのおかげで、実際の動作がリアルに目に浮かんで来ませんか?

up, down, in(into), out, on, off, back, awayなどに代表される、副詞(目的語を伴わない)、前置詞(目的語を伴う)は、空間的・距離的なイメージ、強調効果など、さまざまな役割をもっています。それらが動作動詞と結びついてできたのが句動詞で、ネイティブの子供たちは日常の中で自然に学んでいます。

お子さんといっしょに句動詞を使ってみよう!

お子さんといっしょに句動詞を使ってみよう!

up/down:「上の方へ(に)」「下の方へ(に)」

Pick up your toy.
(おもちゃを拾って。)

Put it down.
(それを下に置いて。)

Let's go up the stairs.
(いっしょに階段を上ろう。)

下にある何かを拾うときは、pick up(拾う+上の方へ)という句動詞を使います。逆はput down(置く+下の方へ)です。トイレの蓋やおもちゃ箱の蓋を上げ下げしながら、put (it) up(上げて)/ put (it) down(下げて)をお子さんといっしょにくり返し練習してみましょう。

またお散歩の途中に階段があれば、"Let's go up the stairs."(簡単に"Let's go up."だけでも良いです)と子供に声をかけながら、階段をいっしょに上がってみるのも楽しいと思います(下るときは、"Let's go down (the stairs).")。何度もやっているうちに、お子さんはupやdownのイメージをつかめてくるでしょう。

in(into)/out(out of):「~の中に」/「(~から)外へ」

Get in the elevator.
(エレベーターに乗って。)

Get out of the car.
(車の外へ出て。)

Please come in.
(どうぞ中に入って。)

電車に乗る(=get on the train)ときの前置詞はonですが、エレベーターに乗るときは、前置詞はinを使ってget in the elevatorと言います。「エレベーターのボックスの中に入る(=in)」イメージですね。
同じく自動車の中に入るときもget in(into) the carと言いますが、その反対は副詞+前置詞のout of(~から外へ)を使い、get out of the carになります。

3つ目の例"Please come in."は、お家ごっこをしているときに使えそうですね。要は、日常生活、遊びの中で句動詞を自然に覚えていくのが良いのです。

on/off:「~にくっついて」/「~から離れて」

Turn on the TV.
(テレビをつけて。)

Put on a sweater.
(セーターを着なさい。)

Take off your shoes.
(お靴を脱いでね。)

テレビや照明のスイッチをオンにするときは、イディオムでもある句動詞turn on(反対はturn off)を使います。目の前でお子さんといっしょに動作を確認できるので、小さな子供でも理解しやすいですね。お子さんがturn on(~をつける)/turn off(~を消す)のイメージをつかんだら、"Can you turn on/off the TV?"(テレビをつけて(消して)くれる?)とお願いしてみましょう。

句動詞は、洋服や靴の脱ぎ着のときにも活躍します。服を着る、何かを身に着けるときはput on、逆に服や身に着けたものを脱ぐときはtake offです。
お子さんの着替えのとき、着たり脱いだりの動作とともに、この2つをくり返し使ってみてはいかがでしょうか。実際の動作をともなうことで、on(~にくっついて)/off(~から離れて)のイメージがお子さんにも理解しやすいだろうと思います。

back:「もとへ」「もとに戻って」

Come back here!
(ここに戻って来て!)

Go back to your seat.
(席に戻ってね。)

Give it back to your friend.
(それをお友達に返してね。)

お子さんがひとりで先に走っていってしまい、困ることってよくありますね。「戻っておいで!」と言うときは、大きな声で"Come back(here)!"と呼びかけましょう。今いるところから最初にいた場所へ戻って来る(=back)というイメージですね。

go backは話し手(親御さん)と聞き手(お子さん)の両方から離れた場所へ戻る場合に使います。2つ目の例"Go back to your seat."は教室で先生が席を離れた生徒によく言うフレーズでもあります。

そして「~を~のもとへ返す」という意味のgive something back(to)は、お子さんがお友達とおもちゃの取り合いになったときに使えそうですね。

away:「離れて」「遠くへ」

Put your toys away.
(おもちゃを片づけてね。)

Let's throw this away.
(これを捨てようね。)

Rain, rain, go away.
(雨よ、雨よ、どこかへ行って=天気になあれ。)

散らかしたものをどこかへ片づけるとき、英語ではput away(置く+遠くへ)と言います。また、お子さんが何か汚いものを持っていたら、throw away(捨てる+遠くへ)という表現を使い、捨てさせることもできます。どちらもawayがあるため、「ここにあるものをどこか遠くへやってしまう」というイメージが目に浮んできます。

3つ目の例"Rain, rain, go away."は歌にもなっています。「今降っている雨がどこか遠くへ(=away)行きますように!」という意味ですね。このフレーズをもじったものに"Pain, pain, go away."(痛いの、痛いの、飛んでけー)がありますが、実際にお子さんが痛みを抱えているときに使ってあげると、お子さんはaway(遠くへ)のイメージがよくわかると思います。


以上、「動詞+副詞または前置詞」からなる句動詞をいくつかご紹介しました。副詞や前置詞の基本的な意味やイメージがわかると、句動詞はとても便利で使いやすいと思われたのではないでしょうか。

動画や絵本にもたくさん句動詞が使われているので、お子さんといっしょに探してみるのも面白そうですね。そうやって日常生活の中で楽しみながら、句動詞を使ってみましょう。
"Keep it up!"(=その調子で頑張ってください!)


光藤 京子(みつふじ きょうこ)先生

執筆家、異文化コミュニケーション・英語教育コンサルタント。会議通訳、翻訳ビジネス、東京外国語大学などでの指導経験を生かした書籍、記事ブログを多数執筆。代表作の『働く女性の英語術』(ジャパンタイムズ)、ベストセラーになった『何でも英語で言ってみる! シンプル英語フレーズ2000』(高橋書店)のほか、『英語を話せる人 勉強しても話せない人 たった1つの違い』(青春出版社)、『英語だって日本語みたいに楽しくしゃべりたい リアルライフ英会話 for Women』(大和書房)、『伝わる英語 5つの鉄則』(コスモピア)など。最新作に『する英語 感じる英語 毎日を楽しく表現する』(ジャパンタイムズ)がある。

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