専門家の先生による、英語教育に関する記事

お絵かきしながら英語で遊ぼう1

今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、英語の絵本の楽しい活用法をご紹介いただきました。
また、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーでは、英語が苦手な保護者でも、英語の絵本の読み聞かせをして問題ないことをご説明します!

英語の絵本を使ってお絵かきしてみよう!

前回のエッセイでは、英語の絵本の選び方についてお話しました。
絵本は単に読むだけではなく、絵本に書かれている内容を体を使って表したり、絵を描いたり、工作したりする活動にも発展させることもできます。
また、CD・DVD付きの絵本なら、音声に合わせて動作をしたりして遊ぶこともできます。特に未就学児から小学1~2年生くらいの子供たちは、音楽に合わせて体を動かすのが大好きです。

今回は、Oxford大学出版から出版されている、Oxford Reading Treeという絵本のシリーズから、絵本を使ったお絵かき遊びをご紹介します。
この絵本シリーズは、1980年代頃までイギリスの小学校の国語科の読み物として使われていました。登場人物は主人公の4歳の男の子Kipperと、7歳の双子の姉Biffと兄Chip、それにDad(パパ)とMum(ママ※1)、ペットの犬のFloppyの家族で、子供の日常生活が描かれています。子供たちが家の周りで遊んでいたり、家族旅行に行ったり、地域の行事に参加したりと、読者が身近に感じられる内容になっています。
この絵本のストーリーを活用して、次のようにお絵かきを楽しんでみてはいかがでしょうか。

※1 アメリカ英語ではママのことをMomと書きますが、イギリス英語ではMumと書きます。

スニーカーをデザインしながら色や形の英語表現を覚えよう

Oxford Reading Treeは語彙数別にStageが分かれていて、1、1+、2、3と進んでいくと、だんだん語彙数も増えていきます。未就学児から小学校低学年までは1と1+、小学校低学年~中学年、高学年にはStage2やStage3がおすすめです。

Stage2に、New Trainers(新しいスニーカー)という次のようなストーリーがあります(※2)。

※2 アメリカ英語ではスニーカーのことをsneakersと呼びますが、イギリス英語ではtrainersと呼びます。

【New Trainersのあらすじ】

Chipのスニーカーがボロボロになったので、ママとパパがChipの靴を買いに靴屋さんに出かける。
靴屋さんが疲れてしまうほど色々なスニーカーを出してもらい、Chipはやっと赤と白の2色が入ったスニーカーを選んで、大喜び。パパも茶色い皮の靴を買ってご機嫌。
しかし、Chipは公園で友達と遊び、新しいスニーカーは泥まみれ(The trainers got muddy.)になり、ぬれてしまう(The trainers got wet.)。
パパは怒って(Dad got cross.※3)、靴を洗うようにとChipに言う。
ところが、新しい靴を履いたパパも、うっかりコンクリートミキサー車がコンクリートを流し込んでいる道路に足を踏み入れてしまう。パパの"Oh, no!" というせりふでお話は終わる。

※3 アメリカ英語では「怒った」はangryやmadが使われますが、イギリス英語ではcrossが使われます。

この絵本を読んだ後、親子で自分が欲しいと思うスニーカーを描いてみましょう。次のような流れで、英語の表現を覚えることができます。

①シンプルなスニーカーの絵を用意しましょう。

子供や保護者が描いても良いし、インターネットのフリー素材サイトなどからダウンロードしても良いでしょう。

お絵かきしながら英語で遊ぼう2

②子供に好きな模様をたずねながら、スニーカーに模様を描いていきます。

模様を表す英単語を使いながら会話してみましょう。円(circle)、ハート(heart)、星(star)、三角(triangle)、ひし形(diamond)などを描いていくことができます。

◆好きな模様をたずねるやりとりの例

保護者:What shape do you like?(あなたはどんな模様が好きですか?)
子供:I like stars.(私は星が好きです。)
→子供の絵に星の模様を描く
保護者:I like hearts. (私はハートが好きです。)
→保護者の絵にハートの模様を描く

お絵かきしながら英語で遊ぼう5

③子供に好きな色をたずねながら、スニーカーの模様に色を塗ってみましょう。

子供に色をたずねる時は、インターネットで次のようなカラフルなイラストを見せてあげると、どんな色が好きかをイメージしやすくなります。

お絵かきしながら英語で遊ぼう6

◆好きな色をたずねるやりとりの例

保護者:What color do you like?(あなたはどんな色が好きですか?)
子供:I like blue.(私は青色が好きです。)
→子供の絵の模様を青色で塗る
保護者:I like pink.(私はピンク色が好きです。)
→保護者の絵の模様をピンク色で塗る

お絵かきしながら英語で遊ぼう3

◆好きな色と模様をたずねるやりとりの例

保護者:What color do you like?(あなたは何色が好きですか?)
子供: I like green.(私は緑色が好きです。)
保護者:How many stars do you want?あなたは何個の星が欲しいですか?)
子供: Two, please.(2つ欲しいです。)
→子供の絵に緑色の星の模様を2つ描く

お絵かきしながら英語で遊ぼう4

Tシャツのデザインもしてみよう

スニーカーのデザインで使った英語のフレーズを応用して、Tシャツのデザインをすることもできます。Tシャツの絵は描きやすいので、スニーカーの絵を用意しづらいときにはこちらから取り組んでみてもいいかもしれません。

①シンプルなTシャツの絵を用意しましょう

②子供に好きな模様と色をたずねながら、Tシャツに模様を描いてみましょう。

◆好きな色と模様をたずねるやりとりの例

保護者:What shape do you like?
子供:I like circles.(私は円が好きです。)
保護者:What color do you like?
子供:I like yellow.(私は黄色が好きです。)
保護者:This is for you.(これをどうぞ。)
子供:Thank you.(ありがとう。)
→子供の絵に黄色の円の模様を描く

お絵かきしながら英語で遊ぼう7


ロボットを描きながら身体の部位の英語表現も覚えよう

Oxford Reading TreeのシリーズのStage1+の中には、Chip's Robot(チップのロボット)というストーリーもあります。
これはChipが厚紙を使って自分のロボットを作るストーリーです。Chipはまず、"This is a leg."(これは脚だよ)と言いながら、円筒形の筒を本体につけます。次に、"This is an arm."(これは腕だよ。)と言いながら、円筒形の筒を本体につけます。さらに、目や鼻、口がついた頭をつけたらロボットができあがり!というお話です。
こういう絵本を読んで工作がしたくなったら、早速やってみましょう。もちろん絵を描いてもOKです。ロボットの工作や絵ができたら、次のように英語でロボットの体の部位がどんな図形でできているかを説明してみましょう。色も説明すると、より詳しい英語表現の練習になります。

お絵かきしながら英語で遊ぼう8

◆ロボットの絵を説明する子供のフレーズの例

This is my robot, Hiroshi.(これは私のロボット、ヒロシです。)
This is a head. It's a circle. (これが頭です。それは円になっています。)
This is an eye. It's a star.(これが目です。それは星になっています。)
This is an arm. It's a heart.(これが腕です。それはハートになっています。)
This is a leg. It's a rectangle.(これが脚です。それは長方形になっています。)
This is a nose. It's an oval.(これが鼻です。それは楕円になっています。)
This is a mouth. It's a rectangle.(これが口です。それは長方形になっています。)

遊び感覚で英語の絵本を楽しもう

このように、英語の絵本の内容を発展させて、色々なお絵かきを楽しむことができます。
英語の絵本に慣れ親しむことは、英語を読んだり発話したりできるようになるための第一歩ですので、ぜひ親子で楽しんでください!

『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第19回:英語が苦手な親が、英語の絵本の読み聞かせをしても大丈夫ですか?

英語教育お悩み解消Q&A第19回

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

英語の絵本の読み聞かせは、英語が苦手な親がしても大丈夫ですか?むしろどんどんしていくべきですか?

◆佐藤先生のご回答◆

英語が苦手な保護者が英語の読み聞かせをしても大丈夫です。むしろ、どんどん楽しんでください。
また、英語の絵本には、CDがついているものも多くありますので、CDの音声をお子さんと一緒に英語を反復してみると、さらに良いでしょう。CDには効果音が入っていたり、登場人物になりきって読まれたりしていますので、模倣することで読み聞かせはより楽しくなります。

例えば、今回ご紹介したOxford Reading Treeには、アメリカ英語とイギリス英語の両方で収録されたCDがついています。また、別売りの音声ペンもあります。
こういった絵本に付属の音声を利用して、絵本に出てくる単語やフレーズを覚えたら、覚えた英語を使ってお絵かきなどをしてみましょう。
絵本で覚えた英語を使いながら遊ぶと、絵本にさらに愛着がわきますよ。


佐藤先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。

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