専門家の先生による、英語教育に関する記事

英語絵本を取り入れて

今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、英語の絵本を取り入れた親子のやり取りで、子どもの英語のアウトプットを引き出す方法を解説しています。
また、今回の『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーは、幼稚園に通いはじめてからお子さんの英語学習時間が減ってしまったという方からのご質問です。英語の絵本で家庭学習の質をアップする方法が解説されてますので、ぜひチェックしてください!


親子で会話量の多いペアは、日本語の未知語をくり返すのが上手で、反復の上手なお子さまは日本語の単語量が多いことを以前お話しました(※1)。
また、5歳までのお子さまを調べてみると、日本語の反復が上手で単語量の多いお子様は、初めて聞いた英語を反復することが上手で、英語の単語量も多くなることが私の研究から分かりました。
このように、「子どもの発話量=アウトプット」を増やすために重要なのは、親子で「インタラクション=やりとり」を増やすことです。親子のやりとりを増やすために、英語の絵本を大いに利用しましょう!

※1 参考リンク:

英語絵本の「読み語り」と親子のやりとりがアウトプットを増やす

2020年度から小学校では5年生から英語が教科になり、3年生から英語が必修化されます。
それまでの移行期間につかう文部科学省が作成した教材に、初めて絵本が加わりました(※2)。

※2 参考リンク:
小学校の新たな外国語教育における補助教材(Hi, friends! Story Books)作成について(第3・4学年用)

私は町田市やその他の小学校で10年以上前から英語教育に絵本を取り入れるよう推進していましたが、やっとその価値が認められたのだと思います。
英語絵本には下記のようなメリットがたくさんあります。


【英語絵本のメリット】

子どもに主体的な学習力がつく:

絵本を読み進める中で、子どもは先の内容を推測したり想像したりして、知る喜びを体験し、自ら学ぼうとする習慣をつけていきます。
この習慣は主体的に課題に取り組む力につながり、未就学児にも小学生にも求められる力を養うことになるのです。

英語の表現が必然的な場面で導入されて意味が分かりやすい:

英語の絵本にはイラストがあり、またそのイラストにぴったりの必然的な場面で文が挿入されるので、英語の意味が把握しやすいのです。

文が短く、反復されている絵本はアウトプットしやすい:

英語でも日本語でも、子どもは文章やストーリーが繰り返されている絵本が好きです。
アウトプットに使うには、特に文が繰り返し使われている絵本をおすすめします。

英語について自然な気づきを子どもに促す:

英語の絵本を読むことで、子どもは下記のようなことに自然に気づいていきます。

・英語の本は、右から左にページをめくること
・英語の文章は大文字と小文字のアルファベットからなっていること
・英文の頭は大文字から始まり、文の終わりには小さな「.」ピリオドがついていたり、「?」マークがついていること
・日本語と同じものを指しても、発音が異なること

英語の本とはこういうもの、文字とはこういうもの、と自然に気がつき、親しみがわきます。
さらに、絵本の内容を音声でもインプットすれば、文字だけでなく発音も自然に身についていきます。

『Five Little Monkeys』という歌(※)を初めて聞いた1歳8ヵ月の子どもが、「ジョージ!」と言っておさるのジョージのぬいぐるみを連れてきたことがあります。
この子は"Monkeys"という英語の発音を聞いて、「おさるのジョージ」とおなじ種類の動物のことだと分かったのです!
この歌には関連する絵本がありますが、絵本と歌などの音声を合わせて活用すると、子どもの気づきをさらに促すことができます。

※参考リンク:
①Yotube動画 Five Little Monkeys Jumping On The Bed | Children Nursery Rhyme | Songs
②絵本 Five Little Monkeys Jumping on the Bed (A Five Little Monkeys Story)

英語絵本を素材に親子でやりとりを楽しむことができる:

子どもは親に本を読んでもらうのが大好きです。
お忙しい保護者の方も、子供が寝る前のひと時は、ゆっくりと本を読んであげてはいかがでしょうか?
絵本は読み聞かせるのではなく、「読み語り」ます。
また、子どもとのやりとりで、ぜひ英語を使ってみましょう。

<「読み語り」の方法>

Eric Carleの絵で有名な『Brown Bear Brown Bear, What Do You See?』を例にとって「読み語り」の方法をご説明します。

①まずリズムよく読んで聞かせます。

②動物が出てきたら、英語で鳴き声を入れます。
動物の鳴き声を英語で表すと、犬は"bow-bow"、ねこは"meow"、ヒツジは"baa"、アヒルは"quack"という風になります。
鳴き声の英語の響きは子どもにとても受けますので、しっかり鳴きまねをしましょう。
「ディズニーの英語システム」(DWE)のDVDやBookにも、動物の鳴き声をたくさん紹介している部分がありますが、このような箇所は子どもの注意をひくために非常におすすめです。

③手拍子を入れて読んでみます。
最後のページでは、登場した動物が並んでいます。
ここでは子どもと一緒に手拍子を2回入れて下記のように読みます。
♪のところで手拍子を入れてみてください。

 "Brown bear ♪♪, red bird ♪♪, yellow duck ♪♪, blue horse ♪♪..."
 (茶色いクマ♪♪、赤い鳥♪♪、黄色いあひる♪♪、青い馬♪♪...)

まだ発話できないお子様の場合は、手を打つところを一緒にやってみましょう。

④発話が可能な2歳以降のお子さまには、英語で質問をします。
以下のフレーズは覚えておくと、いろんな絵本で使えます。

 "What's this color?"(これは何色かな?)
 "What's this animal?"(これは何の動物かな?)
 "Do you like dogs? "(あなたは犬が好き?)
 "Yes, you like dogs. I like dogs too."(そう、あなたは犬が好きなんだね。私も犬が好きだよ。)

こんな簡単なやりとりで良いので毎日続けていると、英語が出やすくなります。
慣れてきたら、子どもからママに質問を出してもらいましょう。


保護者の方が楽しい気分で英語の絵本を読んでいると、その気持ちが子どもに移ります。
英語の絵本をぜひ活用してみてください!
大きくなってから始めると絵本に抵抗感をもつお子さんも多いので、小さい頃から英語の絵本は始めましょう。

『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第6回:幼稚園に通っているため家での英語学習時間が減ってしまいましたが、よい対策はありますか?

眠る子ども

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

4歳の子どもですが、幼稚園に通っているため、家での英語学習時間が減ってしまいました。
何かよい対策はありますか?

◆佐藤先生のご回答◆

ぜひ、英語の絵本をご活用ください。
「毎日寝る前に、英語の絵本を1冊読む」ということを習慣づけましょう。
もちろん、日本語の絵本を読むことも大切ですので、日本語の絵本に英語の絵本を1冊加えると理想的です!
保護者の方と英語を使った楽しい思い出は、英語好きの子どもを育てます。
子どもは動物が好きなので、Rod Campbellの書いた『Dear Zoo』のように動物がたくさんでてくる絵本も人気です。

保護者の方が絵本を読んであげるときは、"It's book time!"(ご本の時間だよ!)とか、"Who wants a story?"(お話を聞きたい人は?)などと子どもに声をかけましょう。
絵本の読み始めには、"The Title of today's story is "〇〇〇〇"."(今日のお話の題は『〇〇〇〇』です。)と言って、必ず本のタイトルを読みます。
最後は、"The End."(おしまい。)と言って本を読み終えて、子どもがお話の余韻を味わいながら眠りにつけるように導いてくださいね。


佐藤久美子先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子どもの言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。

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