英語に親しめば異文化を許容する心が育つー英語はコミュニケーション力のある子どもを育てる
2017.07.31
玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイです!
「英語が身につくこと」以外にも、英語学習にはメリットがたくさんあるようです。
幼い頃から英語を学ぶメリットは、大きく分けて3つあると思います。
今回はその3つのメリットについてご説明します。
メリット① コミュニケーションへの意欲や友だちへの関心が高まる
1つは、コミュニケーションへの意欲や友だちへの関心が高まることです。
英語教材の中では、パパもママも赤ちゃんも子どもも、ニコニコしながら楽しそうに会話しています。
この楽しそうな気持ちは見ている子どもたちにも伝わり、一緒に話してみたい、遊んでみたいという気持ちにさせます。
また、外国人の友だちと遊ぶ機会があると、ジェスチャーやアイコンタクトも有効だけれども、1つの単語が伝える情報量はとても大きいことがわかります。
私自身、イギリスに息子を連れて行ったときにそのことを実感しました。
現地の友だちと仲良く遊んでいたのに帰ってきた息子に、「お友だちは?」と聞いたところ、「もう帰ったよ。(今日は)戻ってこないよ。Tomorrow! って言ったから」と息子は答えたのです。
『tomorrow(明日)』という単語を直接教えた記憶はないのですが、いつの間にかその意味を理解していました。
それから、「○○はどういう意味?」と、お友だちが使った単語の意味をさかんに聞くようになりました。
ある時、「『ドーメイ!』って、何の意味?」と尋ねてきた息子。
「そんな英語はないよ」と答えてから気がつきました。
息子がよく使う日本語『ダメ!』を、イギリスの友だちが英語風に発音したら『ドーメイ!』になっていたのです。
自分のおもちゃを他の人に使わせたくない時に、イギリスの友だちは『ドーメイ!』を使っていました。
息子が英語を理解しようと歩み寄ったことで、友だちも日本語に興味をもってくれたようです。
こんな風に「英語が話せるとより理解し合えて楽しい」という気持ちを体感すると、自然に英語に意欲的になり、好きになります。
息子はその後、どこに行っても友だちをたくさん作れるようになりました。
メリット② 性格が明るくなり行動が積極的になる
2つ目は、性格が明るくなり行動が積極的になることです。
小学生たちが、浅草や日光で外国からの観光客に質問するプロジェクトを行っていますが、「どこから来ましたか?」「日本食では何が好きですか?」というような簡単な会話でも通じると、自信がつき、小学生たちにより積極性が生まれます。
この積極性は、英語で会話するときに限らず、他の行動にも影響してきます。
実はこのメリットは小学生たちだけでなく、担任の先生たちにも現れます。
英語力に自信がなく、英語の研修での発言が当初なかった先生たちでも、少しずつ教室での英語の授業に慣れてきて、子どもたちとも簡単な英語でやりとりができるようになると、明るく積極的になってきます。
そのため、英語学習を学校全体で積極的に取り入れた小学校は、子どもたちも先生たちも発言が増えて雰囲気が明るくなります。
英語を親子で始めることで、家庭の雰囲気も明るくなり、親子の会話も弾むと思います。
メリット③ 他者を理解し、許容する心が育つ
3つ目は、他者を理解し、許容する心が育つことです。
外国人の行動を映像で見たり本で読んだりすることにより、外国の習慣や文化にふれることができます。
その時に自分の常識とは違う世界を知り、その世界が「いやなこと」ではなく「面白いこと」だと感じる好奇心が生まれます。
このような異文化を許容する心は、子どもの成長には欠かせません。
よく耳にする『グローバル人材』ということばは、「自分と他者、自国と他国に垣根を作らない人」という意味だと私は理解しています。
家庭で他者や他国との垣根を作らなければ、子どもは学校や社会でも垣根のない行動をとることができ、グローバルに活躍するチャンスがうまれます。
まずはご家庭でお子さまと十分に会話をして、コミュニケーションの力を伸ばしてあげましょう。
英語学習も、是非ご一緒に楽しんでいただければと思います。
次回からは、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』の連載が始まります!
Facebookやメールにて質問をお寄せ頂いた方々には、この場を借りて御礼申し上げます。
皆さまにお寄せいただいた英語教育のお悩みを、佐藤先生がすっきり解消していきますのでお楽しみに!
佐藤 久美子先生
玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子どもの言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。