専門家の先生による、英語教育に関する記事

言葉は自ら学んでいくもの

言葉は自ら習得するもの

子どもの言い間違いは、大切で創造的な行為

子どもは言語を習得するときに、もの真似のように、聞いたことをそのまま発話していくわけではありません。耳から入ってくる言葉を声にして出すときには、自分の頭のなかで伝えたいことを組み立てていくという作業をしています。
例えば、「きれいくない」と、子どもは言います。これは、「たのしい」、「おいしい」の後には、「い」 をとって、その代わりに、「くない」をつけると否定形のことば(たのしくない、おいしくない)になる、 という規則性をとらえて、それを応用して発話している状態です。これは英語圏でも同じで、3~4歳の子どもが、goをgoed (正しくはwent)、 comeをcomed(正しくはcame)などと言う傾向がよく見られます。頭の中で言葉の規則性を構築しようとしているからこそ、言い間違えるのです。言葉を習得するということは、子ども自らが行う創造的な作業なのです。
9歳になるまでの小さい子どもは右脳が発達していると言われます。カメラ脳といわれる右脳は耳にした言葉全体を、パッと写真のようにとらえます。それからその言葉を左脳に移して分析し、規則性をとらえながら自分の言葉として話します。そしてひとつの言い方で覚えた規則性をほかの表現にあてはめて、正しい言い方に修正しながら習得していきます。試行錯誤は"ことばの習得の母"と言われます。

たくさんのインプットを

右脳の働きが活発な時期に、聞いたり歌ったりして言葉をたくさんインプットし、土台を築くことで、自然に発話する(アウトプットする)ことにつながっていきます。
例えば、胎児は6ヵ月ごろから、母親や父親などの会話を耳で聞きながら、各言語に特有のイントネーションを習得しています。一文字一文字の発音よりも先に、言葉の「枠」として覚えているのです。イントネーションとは音声の高低のパターンのことを指しますが、その枠を覚えていることで、いろいろな言葉を応用させて入れることができます。"Mommy is smart!"という表現を聞いて覚えた"○○is△△"という枠を使って、"Daddy is great!"という言い換えができるのです。
その過程のなかで、子どもは常に正しい表現を言ったり、すぐに新しい表現を身につけたりすることはできないかもしれません。ですが、言い間違えた表現を自分で修正していくことそのものが、言葉を定着させて習得していく大切な過程なのです。

音楽といっしょに身体を動かすこともとても大切

楽しむことがいちばん

音楽や運動・行動(アクション)を、英語習得とセットにすることはとても大切です。脳の仕組みを見ても、運動、感情、記憶を司る部位は互いに密接に連絡し合っています。記憶には短期記憶と長期(永久)記憶がありますが、小さいころに歌や動作とともに楽しく覚えた英語は、永久記憶に残りやすいのです。
歌や絵、場面などから意味を簡単に理解できる状況で言葉を楽しくインプットできるワールド・ファミリーの教材は、子どもの英語習得のプロセスを深く理解して研究、開発されていることがよくわかります。お子さんが好きな歌やイベントなどを積極的に活用するといいでしよう。

親としてできること

言葉を話せるようになるまでには、試行錯誤の長い期間が必要です。ご両親は、その過程を温かく見守ること、そして励ましてあげることが何より大切です。また、ご両親もいっしょにお子さんと英語の学びに参加することが、お子さんとのきずなを深め、積極的に英語を習得する意欲を高めるでしよう。
英語教育研究会が以前行った調査では、小学生のころに英語にふれていた子どもとふれていなかった子どもとでは、中学校ではさほど英語力の差は出てこないものの、中学校後半から高校生になってくると、その差がはっきりと出てくることがわかりました。幼いころ楽しく英語にふれた子ども は、高校生になってから、失敗を恐れずポジティブに英語に取り組むという統計も出ています。つまり、英語に対して積極的な姿勢を示すのですね。
カナダや欧米では、外国語のイマージョン (Immersion:「漬ける」という意味)プログラム が注目されています。これは、児童を外国語にどっぷり漬けることによって効果的な学習が行われるというものです。ワールド・ファミリーの豊かな教材や楽しいイベントなどで、お子さんをしっかり英語漬けにすることによって、すばらしい「英語の漬けもの」ができあがるのです。漬けものは、しっかりと時間をかけて漬けないとおいしくありませんね。お酒もそうです。美酒には相当な熟成期間が必要ですね。
子どもの言語習得も同じです。大切なのは、ー人ひとりのお子さんに合った心のこもった語りかけやコミュニケーションですから、結果をすぐに求めずに、リラックスしていっしょに楽しむくらいの気持ちでいましょう。 "Let's enjoy English together(英語をいっしょに楽しみましょう)"を モットーにしましょう。

イントネーションが、ことばの粋になっている
イントネーションは、 胎児(6ヵ月)のころから脳に入ってくるもので、ことばの枠と言っています。例えば、 Mommy is smart!という枠のなかにDaddy is great!を入れ替えて言うなどです。イントネーションは、胎児のころから聞いてしみ込んでいるわけですから、それも早期から言語を習得していくポイントになっています。

伊藤克敏先生近影

伊藤 克敏 先生

神奈川大学名誉教授
日本児童英語教育学会(JASTEC)顧問
英国国際教育研究所(IIEL)顧問
国際外国語教育研究会会長

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