昨年から続く大学入試への英語の民間試験導入や、今年度から始まった小学校での英語の教科化。
学生にとって英語の重要性が高まる中、実際の英語力はどうなっているのでしょうか。新聞記事から見てみましょう。
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中高生の英語力 改善傾向
水準到達4割 ICT活用課題
全国の公立学校の中高生のうち、昨年度、政府が目標とする英語力の水準に達した生徒は中学3年で44.0%、(前年比1.4ポイント増)、高校3年で43.6%(同3.4ポイント増)だった。
文部科学省が「英語教育実施状況調査」の結果を15日に発表した。いずれも改善傾向だが、ICT(情報通信技術)を使った遠隔授業の推進など課題も残る。
政府は、水準を中3で「英検3級相当以上」、高3で「英検準2級相当以上」とし、目標を「2022年度までに中3、高3ともに50%以上」としている。調査は13年度に始まり、今年で7回目。
中学は都道府県と政令指定都市ごと、高校は都道府県ごとの結果が公表された。都道府県では福井県が中3で61.4%、高3で58.4%といずれもトップ。
最低は中3で愛知県の31.6%、高3で高知県の33.2%だった。ただし、調査結果は教師の判断に左右される。生徒が英検などの資格を持たない場合、教師が教委の目安などに基づき実力を判断するためだ。
調査では英語担当教師の英語力も調査。「英検準1級相当以上」の英語力を示す資格を持つ教師は中学で38.1%(前年度比1.9ポイント増)、高校で72.0%(同3.8ポイント増)と、いずれも伸びていた。政府は目標を「22年度までに中学で50%以上、高校で75%以上」としている。
ICT活用については、教師の教材利用こそ広まっているが、児童生徒による実践的な活用がまだ進んでいない。「教師がデジタル教材を活用した授業」の実施率は小学校99.0%、中学校92.4%。一方で「遠隔地の教師やALT(英語指導助手)とやりとりする授業」は小学校2.8%、中学校4.0%だった。
文科省は、今年度内に全国の小中学生に「1人1台」のパソコンやタブレット端末を配備する「GIGAスクール構想」を進める。担当者は「ICTは新型コロナや災害で遠隔授業が必要になった時の『学びの保障』にも生きる。ぜひ取り組んでほしい」という。
「小中連携」の進み具合にも課題がある。中学校のうち、小学校の英語の授業を参観するなどの連携を「した」と答えた割合は全体の82.0%。昨年度の80.6%から微増にとどまる。北九州市(41.9%)、愛知県(53.9%)、などで遅れが目立つ。
小学校では今春から新学習指導要領が全面実施され、5、6年生で英語が教科化されて年70時間となり、3、4年生でも年35時間の「外国語活動」が正式に導入された。中学校でも来春に全面実施され、英語でのやりとりを重視した授業内容に変わる。
文科省の担当者は「小学校では英語を『使いながら学ぶ』ことを重視した授業が始まっている。文法を学ぶ中学校でも、コミュニケーションの中で身につけられるように、教師は工夫してほしい」と話す。
政令指定都市の中3の英語力(英検3級相当以上)
札幌市 | 41.9% |
仙台市 | 42.8% |
さいたま市 | 77.0% |
千葉市 | 44.2% |
川崎市 | 43.5% |
横浜市 | 57.0% |
相模原市 | 37.5% |
新潟市 | 43.9% |
静岡市 | 41.5% |
浜松市 | 37.2% |
名古屋市 | 35.1% |
京都市 | 48.5% |
大阪市 | 54.0% |
堺市 | 46.2% |
神戸市 | 50.1% |
岡山市 | 41.9% |
広島市 | 48.0% |
北九州市 | 48.6% |
福岡市 | 55.1% |
熊本市 | 54.8% |
都道府県別の中3、高3の英語力(中3は英検3級相当以上、高3は英検準2級相当以上)
中3(%) | 高3(%) | |
---|---|---|
北海道 | 36.5 | 41.2 |
青森 | 39.1 | 41.6 |
岩手 | 39.3 | 42.6 |
宮城 | 38.3 | 36.2 |
秋田 | 39.1 | 53.6 |
山形 | 34.8 | 44.3 |
福島 | 37.3 | 34.7 |
茨城 | 48.3 | 44.6 |
栃木 | 43.2 | 41.8 |
群馬 | 44.2 | 42.2 |
埼玉 | 45.8 | 37.0 |
千葉 | 53.5 | 45.3 |
東京 | 51.6 | 46.7 |
神奈川 | 37.6 | 47.8 |
新潟 | 34.8 | 41.5 |
富山 | 46.2 | 57.5 |
石川 | 48.8 | 49.2 |
福井 | 61.4 | 58.4 |
山梨 | 35.5 | 44.7 |
長野 | 43.6 | 40.9 |
岐阜 | 58.1 | 41.5 |
静岡 | 37.9 | 48.2 |
愛知 | 31.6 | 37.7 |
三重 | 37.1 | 41.4 |
滋賀 | 38.0 | 41.8 |
京都 | 39.8 | 45.6 |
大阪 | 46.9 | 43.7 |
兵庫 | 40.2 | 51.8 |
奈良 | 42.6 | 47.2 |
和歌山 | 42.4 | 37.1 |
鳥取 | 38.8 | 42.7 |
島根 | 34.1 | 45.1 |
岡山 | 44.4 | 46.5 |
広島 | 44.1 | 43.7 |
山口 | 42.2 | 41.9 |
徳島 | 48.9 | 46.9 |
香川 | 34.9 | 42.6 |
愛媛 | 42.9 | 43.9 |
高知 | 36.6 | 33.2 |
福岡 | 42.2 | 47.0 |
佐賀 | 37.0 | 38.5 |
長崎 | 41.6 | 45.3 |
熊本 | 40.5 | 41.2 |
大分 | 38.2 | 40.4 |
宮崎 | 41.3 | 42.6 |
鹿児島 | 36.6 | 35.1 |
沖縄 | 34.5 | 44.3 |
※高3の数値には政令指定都市の生徒も含まれる
宮崎亮 記者
朝日新聞 2020年7月16日付 29面 社会
※承諾書番号21-2527
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