ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 片言英語でも気にしない!マイ・イングリッシュをどんどん使おう~慶應義塾大学・田中茂範名誉教授インタビュー~

英語教育に関するニュース

田中茂範名誉教授1

cocone言語教育研究所所長で、応用言語学者であり、認知言語学を英語教育に取り入れたことで知られる慶應義塾大学名誉教授の田中 茂範先生に、これからの英語教育についてお話を伺いました。


Q1. cocone言語教育研究所(CIFLE)は、どういう活動をしていますか?

Q2. 日本人はなぜ英語が苦手と言われるのでしょうか?

Q3. 英語が話せるようになるにはどうしたらよいでしょうか?

Q4. 田中先生がすすめる「幼児から成人まで一貫した英語教育」とは、どういうものでしょうか?

Q5. 子供と⼤⼈の⾔語習得にはどんな違いがありますか?

Q6.英単語はどう覚えるのがよいでしょうか?

Q7. 子供の英語力を伸ばすために親がやった方がよいことや、やってはいけないことはありますか?


Q1. cocone言語教育研究所(CIFLE)は、どういう活動をしていますか?

英語を教える教員向けの「教育支援活動」に注力

cocone言語教育研究所は、cocone institute for language educationを略してCIFLE(シフレ)とも呼ばれます。
CIFLEでは、英語教育に関する論文執筆などの「研究活動」、学習アプリ開発などの「開発活動」を行っています。
また、英語を教える教員向けに「教育支援活動」も行っており、特に力を入れています。日本の英語教育が大きく変わろうとしている中、まず先生たちの英語を教える力を高めるべきだからです。こうした問題意識からスタートして、PEN(Powerful Educators' Network)という教員のためのサイトをプロデュースしています。PENでは、新指導要領に沿った形で、英語教える力をトータルに高めるための講義をオンラインで行っています。指導技術・授業づくり・専門知識・教師の英語力という4つの柱に関わる内容を65項目に及ぶ動画で学べるのです。さらに、実際の授業で使用可能な英語教材も多数ダウンロードできるようになっています。また、PENは先生たちが英語教育に関する意見交換ができる場にもなっています。

田中茂範名誉教授2

Q2.日本人はなぜ英語が苦手と言われるのでしょうか?

片言英語を恥ずかしく思うから話せない

日本人はよく、"I can't speak English."(私は英語が話せません。)と言いますが、象徴的なフレーズだと感じます。日本人は片言の英語を話すことを恥ずかしいと感じ、自分自身で英語をしゃべることを封じ込んでしまいがちだからです。
世界では約15億人くらいの人が英語を実践的なレベルで話すといわれています。その15億人のうち、アメリカやイギリスなど母語として話している人は4億人もいません。これからもっと英語人口が増え、逆に母語としている国々の人口が減るので、その割合は更に低くなると思われます。この流れの中で、アメリカ英語とかイギリス英語の方が方言レベルの存在感になってしまう時代が来るでしょう。
そして、これまで「ブロークン・イングリッシュ」といわれていた、いわゆる「おかしな英語」というものも存在しなくなると思います。「ジャパニーズ・イングリッシュ」なんてものも存在しないのです。海外の人たちは自分たちの英語がたとえ片言でも誰も気にせず、日本人のように恥ずかしいとは感じていないのです。

Q3.英語が話せるようになるにはどうしたらよいでしょうか?

「マイ・イングリッシュ」をどんどん使おう

英語でコミュニケーションをする時でも、あなたとコミュニケーションしている相手は、あなたの英語に関心があるのではなくて、あなたに関心があるわけです。「正しい英語」という架空の英語にこだわる必要はありません。
また、人は一人ひとり違うのですから、同じ言語を話していても表現や発音などは微妙に違ってきます。3人いれば3人違う英語を話します。つまり人はそれぞれ「マイ・イングリッシュ」をもっているんです。問題はその「マイ・イングリッシュ」の機能性が高いか低いかということだけなのです。
そして、「マイ・イングリッシュ」の機能性を高めるためには、臆せずどんどん英語を話すしかありません。"learning by doing"(実践的学習)という言葉がありますが、使えるようになるためには使うしかないのです。

田中茂範名誉教授3

Q4.田中先生がすすめる「幼児から成人まで一貫した英語教育」とは、どういうものでしょうか?

年齢に応じたタスクハンドリングのための英語教育

英語学習を小学校、中学校、高校、大学へどうつなげていくかを考えると、これからは幼児から成人まで一貫した英語教育プログラムを想定しなければいけないと思っています。一貫していないと、その場限りのぶつ切り的な教育になってしまうからです。
そこで、一貫したカリキュラムのフレームワークを作るため、それぞれの年齢に合わせた言語世界を考えました。例えば3歳の幼児と、7歳の児童と、13歳の生徒、それに大人とではそれぞれ生きている世界がぜんぜん違いますよね。それぞれの年齢に見合ったタスク(課題)を、言語を通じてどうハンドル(遂行)していくかを考えた英語教育でなければいけないと考えています。
要は、試験でよい点を取るための言語学習ではなく、一生を通じて使える英語を身につけなければ意味がないのです。受験は単なる通過点に過ぎません。

Q5.子供と⼤⼈の⾔語習得にはどんな違いがありますか?

言語習得における子供と大人の得意不得意

子供と大人の⾔語習得メカニズムは大きく違います。子供は音そのものに対する感受性がものすごく豊かで、耳で聞いた音の真似がとても得意です。大人は日本語のクセが出来上がってしまっているので真似が下手で、それを矯正するのが大変です。
一方、大人が優位なのは、つまらないものでも我慢して勉強できる忍耐力があることです。子供はつまらなければすぐ飽きてしまいます。
つまり、子供の英語学習では、"meaningful"(意味がある)で、"authentic"(本物)で、"personal"(自分と関わりがある)と子供が感じられるかが鍵なのです。そういう英語学習なら子供はのってきます。

田中茂範名誉教授4

Q6.英単語はどう覚えるのがよいでしょうか?

英単語は関連づけで覚えるのがポイント

人間は機械的な形で何かを覚えるのは大の苦手です。それゆえに、受験勉強で単語帳などを一生懸命覚えてもなかなか使えないわけです。そこで英単語を覚えるときは「関連づけ」が大事になってきます。例えば、次のような方法があります。

①意味が関連する単語をまとめて覚える

意味が関連する単語をセットで覚えると語彙は一気に増えていきます。
"dog"(犬)・"cat"(猫)・"cow"(牛)といった英単語を知っているなら、これらの動物の小さいバージョンを表す"puppy"(子犬)・"kitten"(子猫)・"calf"(仔牛)といった英単語もセットで覚えやすいでしょう。
また、「吊るす」という意味の"suspend"という単語と関連する"suspense"(サスペンス、不安)、"suspender"(ズボンつり)、"suspension"(中止、停止)といった英単語をまとめて覚える方法もあります。

②由来と関連づけて覚える

英語の表現の由来と関連づけて覚えると記憶に残りやすくなります。
ナマズは猫のような鳴き声をするから"cat fish"、ヒラメは平たいから"flat fish"、フグはプウッと膨れるから"puffer fish"など、由来をイメージしながらだと楽しく覚えられますよね。

③日常生活のシーンと関連づけて覚える

"update my blog"(ブログを更新する)、"like 〇〇's Facebook post"(〇〇のFacebookにいいねする)など、日常に根差した英語をシーンごとに覚えるのもおすすめです。

④カタカナ語と関連づけて覚える

「シーズンオフ」や「アフターサービス」のようなカタカナ語の英語での言い方を確認してみましょう。カタカナ語と英語での言い回しが異なる場合は要注意です。「シーズンオフ」は"off-season"ですし、「アフターサービス」は、"after sales service"と言います。知っているカタカナ語を英単語に関連づけて、英語での言い回しを覚えていきましょう。

Q7.子供の英語力を伸ばすために親がやった方がよいことや、やってはいけないことはありますか?

子供を信じて、学びたくなる場づくりを!

小さい子供なら親もいっしょに英語にふれましょう。子供がやっていることに親も「面白いねー」という感じで入っていくとよいと思います。その際、フリではダメです。ちゃんと親も本気で楽しんでやらないと、子供も真剣になりません。
一番のポイントは、子供の能力や可能性を信じることです。親が子供をちゃんと信用しているかが、子供の能力が伸びるかどうかに大きく関わっています。「この子はこの子のよいところがあるし、絶対伸びる」と親が強く心から思っていると子供に伝わり、子供は能力を伸ばしていきます。

絶対ダメなのは親がヒステリックになったりかんしゃくを起こしたりして、英語学習をノルマ化してしまうことです。「うちの子はダメだ」とか、「やらせなきゃいけない」という姿勢はいけません。子供には学習したいときも、したくないときもあります。子供の気持ちによりそって学びたくなる場づくりをしてあげることが大切です。

インタビューを終えて

日本人の英語苦手意識のベースにあるのは「まだ英語を話すレベルに足りない」と思い込んでいることだと述べる田中先生。臆せずどんどん話すからこそ、英語を話す力は上達するんですね。
また、子供の英語学習では、音への感受性の豊かさを活かしつつ、子供が興味がもてる英語にふれさせることで学習効果を高められそうです。
子供を信じて、その能力を引き出す環境づくりを工夫してみましょう。


田中茂範名誉教授5

プロフィール:田中 茂範(たなか しげのり)

cocone言語教育研究所所長、慶應義塾大学名誉教授。コロンビア大学大学院博士課程修了(教育学博士を取得)。
NHK教育テレビで「新感覚☆キーワードで英会話」(2006年)、「新感覚☆わかる使える英文法」(2007年)の講師を務める。
JICA(独立行政法人 国際協力機構)で海外派遣される専門家に対しての英語研修のアドバイザーを長年担当。
『コトバの「意味づけ論」―日常言語の生の営み』(紀伊國屋書店)、『「意味づけ論」の展開―情況編成・コトバ・会話』(紀伊國屋書店)、『幼児から成人まで一貫した英語教育のための枠組み-ECF-』(リーベル出版)など多くの著書がある。

英語教育に関するニュース