ディズニー英語システム TOP > 乳児・幼児からの英語 > 英語教育に関するニュース > 「ことば」は本能だけでは身につかない~慶應義塾大学・辻幸夫教授インタビュー~

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辻幸夫教授インタビュー1

認知言語学を研究されている慶應義塾大学・辻 幸夫教授へのインタビューです!
認知言語学は、「人は言語使用を可能にする豊かな認知能力の萌芽をもって生まれてくるが、心身の発達や周りの人々とのコミュニケーションを土台とする、適切な言語環境におかれてはじめて言語を習得することができる」という考え方をベースにした学問分野です。
最新の認知科学の視点から、子どもがことばを獲得するプロセスについて辻先生にご説明いただきました。


Q1.子どもは、どのようにして言語を獲得するのでしょうか?

Q2.赤ちゃんが周りの人を運動をまねすることが、ことばの発達につながっているということですか?

Q3.子どもに外部からどんな刺激を与えればよいのでしょうか?

Q4.ことばの発達は子どもの感情にもよい影響があるのでしょうか?

Q5.子どもが英語を学ぶ際、どんな教材を選べばよいでしょうか?

Q6.親自身が英語教材に関心をもつことも効果的なようですね。

Q7.「ディズニーの英語システム」(DWE)の英語イベントもインタラクティブなアウトプットの機会になりますか?

Q8.先生にとって外国語を学ぶ意義とはなんでしょうか?


Q1.子どもは、どのようにして言語を獲得するのでしょうか?

子どもは、始めはただ周りのことばを聞いているだけですが、やがて体が成長するに従って自分自身でもことばを話し出すようになっていきます。

お母さんの口の動きや話し方をまねることから赤ちゃんの発話は始まり、成長に従って唇や舌、調音器官の骨格筋や呼吸を上手にコントロールできるようになると、きちんとしたことばを話せるようになります。
構文や単語の意味を単純にインプットすれば言語が身につくわけではなく、認知機能の発達や身体運動を可能にする成長と連動して、子どものことばは発達していくのです。

辻幸夫教授インタビュー2

Q2.赤ちゃんが周りの人の運動をまねすることが、ことばの発達につながっているということですか?

はい。そもそも人間の脳の中には、他の人が運動しているのを見るだけで脳を活性化させるミラーニューロン()という神経細胞がありシステマティックに働いています。
特に赤ちゃんが、お母さんの話す口の動きをじっと見ているときやまねをしようとしているとき、さらには大人の行動を見ているときやまねしようとするときなどには、ミラーシステムが働いています。
ことばは身体の成長とともに周りの人とコミュニケーションをとることで学習されるので、そのためには外部からの様々な刺激を取り入れ続けるだけではなく、相互作用の場をもつことが必要です。

※ミラーニューロン:
霊長類などの脳内で、自ら行動する場合と、他の個体が行動するのを見ている場合の両方で脳を活性化させる神経細胞。
他の個体の行動を見たときも、自分が同じ行動をとったときも、鏡のように同じ反応をすることから名づけられた。
人のことを自分のことのように感じる共感能力も、この神経細胞が関与していると考えられている。

辻幸夫教授インタビュー3

Q3.子どもに外部からどんな刺激を与えればよいのでしょうか?

言語を習得するには、インプットだけでなく、実際に話すアウトプットの場をもつことが大切です。
アウトプットの機会を増やしてあげるためには、親から子どもへの問いかけが重要になってきます。
例えば親は「どうしたの?」「どうしてそう思うの?」などと尋ねて子どもにことばで表現させるように促すことも出来ます。
このように、ことばによる表現の機会をもち、他者とのやりとりの場を増やすことが、子どもの言語習得によい影響をあたえるのです。

辻幸夫教授インタビュー4

Q4.ことばの発達は子どもの感情の発達にも影響があるのでしょうか?

子どもにことばで自分の思いを話して分析させる習慣をつけると、子どもは次第にことばでも感情を制御できるようになります。
例えば泣いている子どもには「どうして泣いているのかな? 〜がうまくできないのかな?」と優しく具体的に問いかけてみましょう。
何らかの意思表示のために泣いている子どもに、ことばによる表現の機会を与え、なぜ自分が泣いているのか、どのようなことを自分が望んでいるのか、どうすればことばで伝えられるのか、子ども自身が考え、表現するようになります。
それはことばの習得だけでなく、子どもがことばによって感情を確認し表現することでコントロールできるように促します。
ことばでの表現機会を増やすことは、情緒面でも大きなメリットになるのです。
辻幸夫教授インタビュー10

Q5.子どもが英語を学ぶ際、どんな教材を選べばよいでしょうか?

子どもが関心をもっている分野の情報、あるいは子どもの好きなキャラクターなどは子どもの興味を引きやすく、子どもは飽きずに教材のことばに接しようとします。
好きなキャラクターが話す英語のセリフなどは進んでまねするでしょうから、自然なかたちでことばを習得することにつながるでしょう。

辻幸夫教授インタビュー8

Q6.親自身が英語教材に関心をもつことも効果的なようですね。

親の「読み聞かせ」は子どものことばの獲得に効果的ですが、それはインプットするだけでなく、読んだ内容について楽しく話したり質問したりすることで、インタラクティブなアウトプットの機会が生まれるからです。
子どもは、親が関心をもつものに必然的に興味を示すようになるため、親自身が英語教材にポジティブな姿勢でふれることは、子どもの学習意欲を高めます。

辻幸夫教授インタビュー7

Q7.「ディズニーの英語システム」(DWE)の英語イベントもインタラクティブなアウトプットの機会になりますか?

相手が親でなくネイティブの先生でも、インタラクティブなアウトプットはよい刺激になります。
英語教材で学んだ内容を媒介にコミュニケーションをとれば、覚えた英語表現も定着しやすくなるでしょう。
例えば、ネイティブの子どもたちに混ざって遊ぶ日本人の子どもの英語習得が早いのは、母語である日本語と同じように、英語を使う必要性があるからです。
子どもが「英語でコミュニケーションしたい」と思う機会を豊富につくることは、英語学習の大きな動機づけとなり習得を早めます。

辻幸夫教授インタビュー9

Q8.先生にとって外国語を学ぶ意義とはなんでしょうか?

言語とは時代情勢や社会的背景の影響を受けて形成されてきたものですので、それを話す人々の文化が凝縮されています。
新しい言語を習得することは、違った価値観や文化にふれて理解するための機会の扉となり、他の文化や人々の考え方を理解することにつながるのです。
異なる文化の人々と接する機会が増えてきた現在、第二言語としての英語は、単に英語文化の理解というだけではなく、それ以外の文化をもつ人々との交流手段としても、今後はいっそう必要とされてくると思います。

辻幸夫教授インタビュー5

まとめ

赤ちゃんや子どもがする「ものまね」、つまり感覚・運動に関わる活動が、後のことばの発達において重要な要素となってくるということでした。
言語をきちんと身につけるためには、母国語・外国語に関わらずインタラクティブなアウトプットの機会が重要になってくるようです。
また、親自身が英語に関心をもつことが子どもたちの学習意欲も引き出すとの興味深いお話もうかがえました。ママ・パパが強い関心をもっていることには子供も関心を示すようになるんですね。ぜひお子さんたちのやる気を引き出すためのヒントにしてください!


辻幸夫教授インタビュー6

プロフィール:辻 幸夫(つじ ゆきお)

慶應義塾大学教授。
日本認知言語学会会長、日本英語教育学会顧問。
慶應義塾大学大学院博士課程修了後、オックスフォード大学やロンドン大学の訪問研究員を歴任。
認知言語学の代表的な研究者として知られている日本有数の認知科学者(言語心理学・意味論)。
『ことばの認知科学事典』を始めとする言語学に関する多くの著書を執筆しており、現在は日本認知言語学会の会長としても活動している。

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