英語教育に関するニュース

小学校の先生たち

2020年度から始まる小学校での英語教科化に向けて、小学校の先生が英語の指導法を修得することも求められるようになってきています。
小学校の先生たちの英語指導力向上のために、どのような課題があるのでしょうか。
新聞の特集記事から見てみましょう。


小学校英語 教える力って?

グローバルな時代に対応するため、2020年度から小学校で英語が教科となる。
小学校での英語教育は長年の議論を経て少しずつ拡充されてきたが、そのたびに教育委員会や現場の教師たちは対応を迫られてきた。
本格的な導入に伴い、教員に認められる英語力、指導力は何か。専門家にも話を聞いた。


小学校での英語教育が、本格的に議論されるようになったのは、30年以上前にさかのぼる。
きっかけの一つは、中曽根康弘首相(当時)の諮問機関として設置された臨時教育審議会が1986年に出した第2次答申。
中学と高校での英語教育について「文法知識の習得と読解力に重点が置かれすぎている」と指摘し、英語教育の開始時期について「検討を進めるべきだ」と提言。
以降、小学校での英語教育の是非が検討課題になってきた。

低年齢から英語を教えるべきだという意見に対し、「まずは日本語をしっかりと学ぶべきだ」との声も強く、賛否両論があった。だが、2000年には経済団体連合会が「読み書き算盤(そろばん)に匹敵する」と小学校からの英語教育を提言。韓国や中国で先行して必修化が進んだこともあり、日本でも導入へと傾いていった。

2002年度から小学校で「総合的な学習の時間」が始まったことも、後押しした。英語や英会話を導入する学校が多く、外国語指導助手(ALT)が小学校にも送られるようになった。11年度には現在の「外国語活動」が高学年で必修化され、20年度の教科化へつながった。

英語が教科になると、授業時間も増え、教員の英語力、指導力が問われる。一方、現役の小学校の教員の多くは、大学時代に英語教育の指導方法などを学んでいない。このため、小学校教員の採用にあたって、英語を選考基準に加える教育委員会も増えている。

朝日新聞が、小学校の教員採用を行う都道府県・政令指定都市・地区の教育委員会にアンケートを実施したところ、「採用試験で英語の筆記試験を行う」と答えたのは68教委中、36教委で53%に上った。「英検などの英語資格を持つ人を優遇する」自治体は62%。中高で英語を教える資格を持つ人を優先する「英語枠」を設ける自治体も目立つ。

宮城県は今年度の採用試験から「教科化に向けた対応」として、英語枠の教員15人を採用する。出願の要件は、小学校の教員免許のほか、中学か高校の英語教諭の免許を持っていることだ。東京都も「英語コース」として30人採用する予定だ。

千葉市も中高の英語免許があれば、「特例選考枠」での受験を認める。学校現場を引っ張る存在を育てることが狙いで、60人程度を採用する予定だ。「高齢の教員がいまから、英語の指導法を習得するのは困難」との事情もあるという。

では、小学校教員の英語力はどの程度なのか。文部科学省によると、英検準1級以上、もしくは同程度の資格を持つ教員は2016年度に全国で3490人だった。3年前と比べて約2割の増加だが、小学校教員全体で見るとわずか1%にとどまる。英語を担当する中学教員(32.0%)や高校教員(62.2%)とは大きな差がある。

海外留学の経験率も小学教員は5.0%だが、中学や高校で英語を教える教員は半数を超えている。アンケートでも「外国語活動の経験のない教員には、英語に対する不安感がある」(愛媛県)などの意見が寄せられた。

川崎市の小学校教諭の女性(28)は今年度に初めて6年の担任になった。授業はALT主導で進めているといい、「教科になったとき、何がどう増えるのか具体的なイメージがまだ持てない。漠然とした不安がある」と明かした。

ALT「依存」に懸念

公立小学校の英語の授業は多くの場合、学級担任が担当する。文部科学省によると、現在の5、6年で実施している外国語活動は93.3%で担任が授業をしており、英語に堪能な専科教員が担当する学級は3.3%どまり。残りは他のクラスの担任や、非常勤講師らが教えている。

そんななか、学校が頼りにしてるのは、ALTと呼ばれる、授業を補佐するための外国人らだ。文科省によると昨年12月現在、全国の公立小学校で1万2424人が教えている。15年度は小学校の授業の少なくとも61.7%に参加。中学の22.1%、高校の9.7%と比べても髙く、「依存度」が高まっている。

≪一部略≫ 


正式教科 教科書使い成績評価も

小学校での英語は現在5、6年生で年35コマ(1コマは45分)、週1回程度の「外国語活動」が必修だ。正式な教科ではなく、英語と親しむため、歌やゲームもしながら学ぶことが目的。新しい学習指導要領が2020年度に全面実施されるようになると、外国語活動は3、4年生に移り、5、6年は教科としての「外国語」が始まる。

教科になると、授業は2倍の70コマに増える。また、外国語活動は「聞く・話す」が中心なのに対し、外国語では「読む・書く」も充実させる。国の検定を受けた教科書を使い、児童の成績評価もする。

全面実施に向けた移行期間として、来年度からは3~6年で英語の授業が15コマ増える。時間数を確保するため、文科省は「総合的な学習の時間」の一部を英語の授業にあてることも認める。


子どもひきつける「担任力」こそ

玉川大教職大学院教授 佐藤久美子さん

8年前から東京都町田市立の小学校向けに英語の指導案をつくり、先生たちの研修も担当してきました。いまは他の自治体の教材作成に加え、週に2回は各地の小学校で講演や研修をしています。
先生たちにうかがうと、英語の教科化を前に、大きな不安を感じています。一つは英語力、もう一つは既に忙しい中で教材や指導案をつくることへの負担です。私は、これらの不安は軽減できると考えます。

英語の発音は正しい方がいいし、文法や表現も間違ってほしくない。ただ、先生がみんな英検の準1級を持つべきだとは思いません。小学校で教えるのに、ビジネス英語は必要ありません。世間が先生に求める英語力が、髙すぎるのではないでしょうか。教材づくりは、市販の教材を参考に、単語の数を増やしたり減らしたりすれば、負担を減らせます。

問われるべきは、英語力よりも先生の教える力です。例えば数の数え方を教えるとき、「ここに鉛筆が3本あります」といった、教材の例文を使いますか。もっと身近な話題で「きょうの給食で残ったポテトの数は?」と言うのはどうでしょう。どの場面でどの表現を使うのが、子どもたちを一番ひきつけられるか。それを知っているのは、担任の先生です。「担任力」が試されているのです。


記事:朝日新聞 平成29年7月30日 朝刊 特集:教育考差点 記事より
レポート:峯俊一平、土居新平記者
※承諾書番号 A17-1190
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