英語教育に関するニュース

小学校英語教育のこれから

最近はグローバル化が進み、仕事や旅行で多くの日本人が、"普通に"海外に行くようになっています。また年々、旅行で日本を訪れる外国人も急速に増加しており、また日本に住む外国人も増加の傾向にあります。

こうしたグローバル社会において、これからの子供たちに求められるスキルを養うための教育手法として、文部科学省は平成32年度から小学校の英語教育の全面的な実施を予定しています。
今までの教育と何か変わるのか?あるいは子供が幼い時から英語を学ぶメリットと、英語教育がこれから全面的に実施されるにあたり、小学校がどのような方法で英語教育に取り組もうとしているのかをお伝えします。

「さいたま市」の英語学習への取り組み

さいたま市教育委員会では、全国小学校の英語教育の全面的な実施に先駆けて、今年、平成28年度より、すべての市立小中学校で、新しい英語教育「グローバル・スタディ」を実施しています。
この「グローバル・スタディ」という名称の理由は、「英語の学習をとおして、地球的な視野に立ち、世界の中の日本を意識させながら、自分の考えをもつこと、主体的に課題を解決することや異文化を理解し、他者を尊重する心を育てることなど、グローバル社会を生き抜く力を養っていきたい」という趣旨に基づいています。

実際のカリキュラムを見てみると、英語学習が小学校1年生から中学校3年生までの9年間を一貫して行われており、「聞く」「話す」「読む」「書く」4つの技能がバランスよく行われるようになっています。こうした英語に特化した教育カリキュラムを見ると、将来、グローバル社会で主体的に行動し、たくましく生きる児童生徒を育成するというのが狙いであることが理解できます。
さらには複数人の指導教員による英語の専門性を活かした授業が行われているのも特徴となっています。「外国の方と英語で積極的にコミュニケーションを図ることができる子どもの育成」も重要な要素とされていますので、授業は担任に加え、ALT(外国人の英語指導助手)や英語教育の高い専門性を持っている非常勤講師が指導に加わります。
小学生からの英語学習の懸念点としては、よく英語より国語力を身に付けることが大切なのでは?と言われます。さいたま市は国語の学習を進めると同時に、英語についての学習をバランスよく進めることで、言葉や異文化に対する興味・関心をより高めていくことができると考えています。また日本語と英語を対比させたり、国語の授業でも英語を含めた外来語と関連させたりすることで、日本語への理解が一層深まるので、相乗効果も期待できると述べています。

確かにグローバル化が今まで以上に急速に進む社会においては、英語学習に力を入れることは急務であり、また現代の小学校教育においても欠かせない要素になってきているのかもしれません。全国に先駆けて、こうした英語教育を行っている、さいたま市の取り組みは、今後ともぜひ注目すべきでしょう。

「さいたま市」英語教育の特徴
・グローバル社会において積極的にコミュニケーションできる子供の育成
・日本人教師に加え、外国人教師も参加して行う授業
・小学校1年生から中学校3年生までの9年間を一貫した英語教育

「品川区立 三木小学校」の英語学習の取り組み

次は品川区で英語モデル校となっている「品川区立 三木小学校」の取り組みを紹介します。
三木小学校は青山学院大学文学部教授のアレン玉井光江先生とともにカリキュラムを考案し、英語教育の現場で楽しいだけではない「学び」のある授業を行っています。

授業のframework(骨組み)を作る

子供たちが見通しをもって安心して繰り返し学べるように、まずは積み重ねを大切にし、そこから活動の内容を徐々にレベルアップする方法で英語学習を進めています。
学習方法にフレームワーク(骨組み)があるので、子供たちはそのフレームワークにしたがって、英語学習を積み重ねていくことができます。

毎時間英語の先生と担任で授業を行う

JTE(Japanese Teacher of English=日本人の英語の先生)やALT(外国語指導助手)と担任がチームで授業を作る取り組みが進められています。これは先に説明した、さいたま市の取り組みと同じですが、日本人教師と外国人教師のコンビネーションで、授業が子供たちにとって理解しやすく楽しい学びの場とするように努めているようです。
やはり外国人のネイティブに接すること、生きた英語の音に接することも英語の学びにおいては重要あることが分かります。

意味のある文脈の中で「ことば」を育てる

言葉はその言葉が使われている場面、その言葉が使われている意味が理解できたときに、はじめて自分の「ことば」になるというコンセプトが主軸にあります。三木小学校ではストーリテリング(お話し)を重要視して、お話教材を活用した学習、文脈を意識した活動の工夫に取り組んでいます。

語彙学習で「ことば」を蓄える

授業の中で新しい単語を覚えるだけでなく、子供たちの頭の中に入っている言葉を、いろいろなカテゴリーで呼び覚まし、考えて発することができるように取り組んでいるようです。

英語教育の将来

現在、文部科学省はグローバル人材を育てることに重きを置いています。大学生に対しては海外留学への積極的な援助を進めていますし、高校生には交換留学等の後押しをしています。平成32年度から小学校の英語教育の全面的な実施は英語によるコミュニケーション能力を確実に養うための改革と言えます。
今後、すべての就学層における英語教育の重要性は一層増すと考えられており、先駆けて英語に幼いころから接しているかどうかは、その後の小中高の12年の教育期間において当然、大きなアドバンテージになってくるものと考えられます。

文部科学省の英語教育改革実施計画を見ると、この計画は2020年(平成32年)に行われる東京オリンピック・パラリンピック以降のさらなる国際化を目指したものであることがはっきりと示されています。

今回はさいたま市、品川区立小学校の事例を取り上げました。今後もこうした先進的な取り組みをご紹介できればと考えています。

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