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子供はどのようにして絵本が読めるようになるの? そのヒントをご紹介!【玉川大学大学院 名誉教授・佐藤久美子先生】

0歳児から英語教材を使いはじめた子供は、およそ5歳になると、英語の絵本が少しずつ読めるようになります。そこで前回は、どのような過程を経て絵本が読めるようになるのか、その一例をご紹介しました。今回は、さらに絵本が親子で楽しく、あるいは一人で読めるようになるためのヒントをお話します。

前回の「子供はどのようにして絵本が読めるようになるの?」はこちらから

1.「英語の本が読める」ことはなぜ大切なのか?

子供が本を読めるようになるには時間もかかり、教えることも難しいのですが、早めに英語を読んだり書いたりすることも含めて英語を学習することは、英語の定着にもつながります。それは以下の理由からです。

(1)読み書きは、口頭で学んだことを強化することができる

例:前回、本が読めるようになる前には、「文字と音を結びつけられるようになる」過程が見られるというお話をしました。
■cを示すと【k】と発音できて、aを示すと【æ】と発音ができ、tを示すと【t】と発音できる。
■次に短い単語を見ると、文字に分けて発音ができる。つまり、catと書かれてあるカードを見ると、c-a-tのように文字を分けて、単音(文字)を1つずつ発音できる。
■単音を続けて発音するとcatとなり、音を聞いて「猫」を指していると理解し、意味がわかる。

口頭で覚えたcatが、文字で見て、同じ「猫」を指すことが理解できて、さらに理解が深まります。

(2)読むことはインプットの幅を広げ、書くことはインプットで得た知識を定着させる

例:読んでわかる単語が増えてくると、書くことに興味が出ます。
catは短い単語なのでつづりを覚えていて書くことができるかもしれません。
さらに、duckはどう書くの?rabbitはどう書くの?と、保護者に聞いてくるようになります。

辞書でも携帯でも良いので調べて見せると、これを読み、まねをして書きます。このときも、自分が好きな動物の名前を書いてみたいという欲求があります。かわいいと思う動物を書いてみたいのです。自分の経験と単語が結びつきます。

さらに、例えばレストランに食事に行くと、そのレストランの名前を、アルファベットを使って書くこともできるようになります!
例えば、「このお店の名前は何?」と聞かれて、「ダイサ」と答えると、DAISAと書くことができます。教えなくても、音と文字が結びついているからです。
また、自分がかかわる状況と文字が結びつくので、興味が出ます。

耳で聞くだけではなく読む機会もあれば、いろいろな単語を覚え、これを書けば、言葉の定着につながります。

(3)読むことで、文章のルールを理解できる

例:適切なスペースを空けて文を書く、頭は大文字、最後にピリオドがくる、など。

(4)子供は自分たちの経験にかかわる、面白い内容を読むのが大好き

知っている動物や好きな食べ物が出てくると理解が容易にできるので、内容に興味をもちやすいのです。

(5)読んだり書いたりできることは、子供の大きな自信につながる

自分の名前がローマ字で書けることは、自慢です。絵を描いてパパやママにプレゼントするときも、必ず名前を書くようになります。

2.読めるようになるヒント

2.読めるようになるヒント

「読む」とは、書かれた文字を話し言葉につなげ、書かれた単語から意味を理解する過程です。文を読むとき、ことばの知識のほかに、絵本の世界にかかわる知識や自分の経験をもとに内容を理解します。
そこで、読めるようになるには、音と文字の関係を教えることと、お話の状況や意味を理解させる、子供の経験と結びつくような状況を与える、両方のアプローチが必要です。

(1)音と文字の関係

■例えば、dog, dollの最初の音は同じで、dという文字で書かれていることを理解する必要があります。ただし、dog, doll, deskが何か知っていて初めて、その知識は役立ちます。そこで、まずはスピーキング(話す)とリスニング(聞く)の力をつけることが大切です。

■それと同時に、dog, doll, deskを読んだり書いたりすれば、音と文字の関係の理解がさらに深まります。

■たくさん本にふれることで、sight vocabularyと言って、よく本に出てくる頻度の高い単語を、分解しなくても自然に見ているだけで覚えます。単語だけではなく、have fun(楽しむ)、take a bath(お風呂にはいる), catch a ball(ボールをつかむ)のようなチャンクと呼ばれるひとかたまりで意味を成すフレーズも同様に覚えていきます。こうした見て覚えられる単語が増えてくると、読みが速く、流ちょうにできるようになるのです。

(2)指で文字を指しながら声にだして読む

■歌にはくり返し出てくる単語が含まれているので、文字を指しながら歌うと、単語や単語の一部を覚えるのが容易になります。

日本語でも、「げんこつ やまの たぬきさん」などの歌を歌いながら歌詞を指でさすと、文字が定着していきます。単独の文字と音に慣れてきたら、歌ったり絵本を読んだりする状況を設けて、文字にふれることが大切です。
歌は、いっしょに文字を読んだり、いろいろな音を発音したりする良い練習の機会になります。そのとき、既によく歌ったり聞いたりしている、なじみのある曲を選ぶようにしましょう。

例:

Old MacDonald had a farm, E-I-E-I-O
And on this farm he had a duck, E-I-E-I-O
With a quack-quack here, and a quack-quack there,
Here a quack, there a quack,
Everywhere a quack quack.
Old MacDonald had a farm, E-I-E-I-O

(その後、duckの部分をpig, horse, cow, roosterなどに変えていきます)

この歌を歌いながら、指で英語をさしていきましょう。

(3)エコー・リーディング

(3)エコー・リーディング

絵本の読み聞かせをするときに、キーとなる文を、いっしょに反復します。
例えば、『The Very Hungry Caterpillar(はらぺこあおむし)』(Eric Carle, 1994)には、"But he was still hungry"というフレーズが何回も出てきます。その部分を、いっしょに読みます。
おなかがすいているというジェスチャー、例えばおなかを手で触る動作をつけたり、そのまねを子供にさせたりしながら、いっしょに参加させて読むと効果的です。

(4)お話の世界を読みながら共有

歌で行ったように、既に知っているお話を読むときには、文字を指しながら読んでいきます。
このとき、音声ペンなどがついている本はオススメです。保護者が最初ペンを使って音をだし、その後、子供が反復する。次第に、保護者がいなくても子供が自発的に音声ペンを使い反復するようになります。これは、読む楽しさと、自分で本を開き一人で読んでみようとする動機づけになります。
そこで、子供がはじめる前に、まずは一通り保護者が読んであげることが必要です。感情をこめて読んでください。

可能ならば、いっしょに読むときにその本を使ってお話をします。

Do you like this book?
(この本は好き?)

What do you see in the picture?
(絵の中に何が見えるかな?)

Who is this?
(これは誰かな?)

What is this?
(これは何かな?)

Do you want to read one more time?
(もう一度読みたい?)

本を読む前に、表紙を見て上記のようなお話をしたり、読んでいる最中にお話をしたり、読後にたずねたりして、お話を理解して夢中になれるようにガイドします。

絵本を読む、読めるようになるには、外国語が理解できるだけではなく、お話の世界に入り、その状況を自分の経験に照らし合わせながら理解してくことが必要なのです。

ここに載っているヒントで、「できる!」「おもしろそう!」と思われたものから、ぜひ挑戦してみてください。また、『The Very Hungry Caterpillar』の本を読むときは、絵本に出てくる単語や絵をいっしょに描いてみて、単語をそばに書かせ、できたら壁に貼ってあげましょう。

On Monday___he ate through one ___.
But he was still hungry.

On Tuesday___he ate through two ___.
But he was still hungry.

On Wednesday ___ he ate through three ___.など

絵本に出てくる単語や絵を描いてみる

以上の___の上に単語を書いて、そして脇にイラストも描きます。保護者とお子さまの1作ができあがります!もっと小さなお子様の場合は、___の個所に絵だけ描く、あるいは、絵を貼るだけでも良いと思います。
本を読みたくなる第一歩につながります。


佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻)名誉教授。長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの『えいごであそぼ』『えいごであそぼwith Orton』の総合指導、2017年からNHK eテレ『エイゴビート』の番組委員を担当。今日に至る。全国の小学校や教育委員会でも多数研修や講演を行い、小学校英語教育の推進に努めている。

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