専門家の先生による、英語教育に関する記事

親子で海外短期留学

今回の玉川大学 佐藤 久美子先生のエッセイでは、子供の海外経験でどのような効果が期待できるのか、先生ご自身の体験からご説明いただきました。
また、『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』コーナーでは、「英語の家庭学習の習熟度はどう測るの?」というご質問にお答えしています。子供の学習の進み具合が気になるママ・パパは、ぜひチェックしてください!

近年、親子や子供だけで海外に短期留学することが人気になっているようです。
子供にとっては海外での経験は強いインパクトがあり、短期間でも英語力に大きな影響を与える可能性があります。
今回は、私が息子を海外のデイキャンプに参加させたときの例をご紹介しながら、短期の海外経験を通じてどんな成長を期待できるのかお話しします。

長い夏休みが生んだアメリカのデイキャンプ

アメリカの幼稚園や小学校は夏休みが長く、6~9月まで約3ヵ月間がお休みです。
この期間は子供が退屈してしまいがちなので、働いている保護者も、そうでない方も、デイキャンプという制度を利用することがあります。

デイキャンプには様々な内容があり、朝登校して夕方帰宅する遊びが中心のカリキュラムから、スポーツのトレーニングや宿泊を伴うものなどまであります。
日数は、1週間単位で選ぶことができるものもあれば、さらに長いものもあります。
子供の年齢や興味によってカリキュラムを選ぶことができるようになっているのです。

デイキャンプが行なわれる場所も様々で、大学の施設や民間の施設を利用したり、普段はプリスクールを開設しているところが夏休み中に提供したりしています。
また、イギリスにも、種類はアメリカほど多くはありませんが、同様のデイキャンプがあります。

私は息子が6~9歳までの間、夏は海外の大学院で勉強していたこともあり、アメリカで2回、イギリスで1回デイキャンプを利用しました。
それぞれ3週間利用しましたが、その時の息子の様子をご紹介します。

6歳のデイキャンプ...周りの子供たちの影響でたくましくなった

息子が6歳の時の夏は、歩いて送り迎えできる、私が通っていた大学の近所のデイキャンプを利用しました。
このデイキャンプは子供たちを毎日楽しく遊ばせてくれるもので、白い大きな靴下やTシャツに絵の具を使って染め物をしたり、近くの湖までピクニックに行ったり、草花を取ってきて押し花をしたりといったアクティビティに息子は参加していました。
こういった活動の中で、息子は「友達を何とか作る」という強い気持ちを養ったと思います。

一人っ子で、やや臆病なところもあった息子は、この3週間の経験を通してかなりたくましくなりました。
スクールからおやつとして配られた果物をかぶりついて食べたり、暑ければ裸になって遊んだり、お友達のたくましさに影響を受けている様子が見られました。
デイキャンプが終えた息子は「とても楽しかった!」という感想を述べていました。

7歳のデイキャンプ...英語でお買い物ができるようになった

息子が7歳の時には、イギリス・エディンバラのスクールのデイキャンプに入れました。YMCAが主催し、大学の施設を使っているキャンプです。
通い始めて数日経ったとき、スクールの先生が、「英語を習っているんですね。私の言うことはほぼ理解できますね。もちろん、私は英語が話せない子供の指導には慣れているので、ジェスチャーをよく使いますが。」と笑っておっしゃるの聞いて、驚きました。

この時、息子は英語を特に習っていたわけではありません。
それまで自宅で英語のDVDを見たり、CDを聞いたりする程度しか、英語にはふれていませんでした。
このデイキャンプで、英語を聞き取れるようになっていた息子に気づいたのです。

また、デイキャンプの中で、大学の体育館で遊んだり、外でサッカーをしたりしただけではありません。少しお小遣いを使って、先生方が開いたお菓子のお店でおやつを買いに行ったりする、といった経験もできました。
これをきっかけに、息子は、実際のイギリスのお菓子屋でも買い物ができるようになりました。

9歳のデイキャンプ...友達や先生の話す英語はほぼ理解できるように

息子が小学校4年生の時は、アメリカ・アリゾナ州ツーソンのデイキャンプに参加しました。
スクールバスが朝7:30にアパートまで迎えにきて、帰りは17:00頃に送り届けてくれるというものでした。

アリゾナの夏は日中40度を超えることもあるほど暑いのですが、湿度が低いため、外にいても我慢できないほどではありません。
このデイキャンプでは、体に良いからと、スクールの庭の木陰でランチを食べていたようです。
ランチはお弁当だったので、息子におにぎりを持たせたところ、他の子供たちから"What's this?"(これは何?)と聞かれたといいます。
アメリカの子供たちのお弁当は、クラッカーとコーラだけなど、結構質素なものが多いので、珍しかったようです。
息子は、「"Rice ball."(おにぎりだよ。)と答えたよ!」と話していました。

息子はこのデイキャンプで仲良しの友達ができて、友達や先生の話す英語はほぼ理解できるようになっていたようです。
英語がスラスラ話せるようになったわけではありませんが、息子が話してくれるデイキャンプの様子から、友達や先生との交流を楽しみ、遊びのスケールも大きくなっていった様子がうかがえました。

息子はデイキャンプから帰るたびに、ボールを複数使うドッチボールが激しくてスリルがあったことや、水泳が得意な息子と仲良しの友達二人が選ばれてプールにいるサソリを潜って取ってきたこと(「もちろんおもちゃだよ」と息子は言っていましたが)、木をナイフで削ってロケットを作り空高く飛ばしたことなどを話してくれました。

短期の海外経験でも、英語力の基礎となるコミュニケーション力を養える

息子のデイキャンプの思い出は楽しいものばかりではありません。
小学4年生で参加したデイキャンプは片道1時間スクールバスに乗って通っていましたが、息子は「ひとりで乗っているときにバスドライバーに話しかけられるのが嫌だから、ゲーム機が欲しい」とこぼしていたこともありました。
子供同士ならば少々英語が話せなくても遊べますが、大人との会話はより英語力が求められるので、苦痛な場合も多かったようです。
成長した息子は、デイキャンプでの経験について、「英語が通じなくて、結構大変だった。でも、辛抱強い性格になって、友達を作るのはうまくなったと思う。」と話しています。

このように、デイキャンプや短期留学のような子供の海外経験は、コミュニケーション力をつけるという点では大きな効果があると思います。こういった場では誰とでも積極的に話すことが求められるからです。
また、異文化にふれあい、幅広い経験ができるという点でもオススメです。
短期の海外経験で英語がいきなり話せるようになるわけではありませんが、英語力の基礎となるコミュニケーション力を養えるのです。

近年は親子での短期留学も人気ですが、保護者の方も一緒に英語を学んで、学んだこと・発見したことを親子で話せると、より楽しく、学んだことが身につくでしょう。
ただし、保護者の方が遊び気分だと、子供のやる気がそがれてしまうことがあるので、「子供と共に学ぼう!」という気持ちをもつことが必要だと思います。


『佐藤先生に聞く!英語教育お悩み解消Q&A』第23回:英語の家庭学習の習熟度はどう測るの?

英語教育お悩み解消QA第23回

◆DWEユーザーの方からのご質問◆

家庭学習だと、どのくらいの習熟度が適切なのか分からず、ゴールが見えにくいので、あせってしまいます。
DWEを家で楽しく使用している反面、英語学習の進み具合が年齢に対して適切なのかいつも迷っています。
「子供が現在使えている英語が年齢に対して必要十分なのか?」「このままでは、学齢期には学校での学習に追いつかれてしまうのではないか?」などといったことが気になってしまいます。

◆佐藤先生のご回答◆

まず、「DWEを家で楽しんでいる!」というご報告は、何より嬉しいことです。
そして、「習熟度は適切か、必要十分か」という問題ですが、これは一言では言えません。

日本にいると、それほど英語を使う機会が多くないので、子供がどの程度英語を話す力があるか判断しかねます。
しかし、たまに子供と英語を使って遊んでみると、意外と英語が返ってくることに気づくでしょう。
英語の歌を聞いて覚えたフレーズなどを、歌詞とは異なる場面なのに、正しく使っていることもあります。

私の調査では、子供は英語の反復を続けていると、反復力が伸びるため、英語の応答もできるようになってくるようです。
ある日遊びの中で英語でたずねてみると、英語で答えることができるようになっていた、ということがわかったりするのです。
リスニングの力がついて、英語を聞くことにかなり慣れてから、子供はスピーキングができるようになります。

このように、子供はじっくりインプットしたり、反復を繰り返したりすることで、英語を話せるようになっていきます。
まずは、あせらない気持ちが大切です。
お子さまの英語生活は始まったばかりなので、今は楽しんで英語を続ける、ということが重要なのです。

小学校に上がっても、未就学児から英語を始めている子供は、聞き取る力があります。
小さな頃から英語を楽しみ続けていれば、成長したお子さまは自信を持って英語の授業に臨めるようになるでしょう!


佐藤先生近影

佐藤 久美子先生

玉川大学大学院 教育学研究科(教職専攻) 脳科学研究所 教授。
長年、子供の言語獲得・発達の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。
2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの「えいごであそぼ」、「えいごであそぼwith Orton」の総合指導を担当。

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