専門家の先生による、英語教育に関する記事

伊藤克敏先生近影

神奈川大学名誉教授 伊藤克敏 先生にお話しを伺いました。

英語教育についての様々な悩みや質問を伊藤先生に伺いました。
【前編】【後編】にわたってご紹介いたします。

Q:英語教育はやはり、子どもが小さいころから始めたほうがいいのでしょうか?夫は「本人が興味をもち始めてからでも遅くないんじゃないの?」と言うのですが・・・(お子さんの年齢:0歳5カ月)

一時的な拒否反応なら無理強いは禁物です

拒否反応の理由はいろいろあるでしょう。お子さんの場合、英語そのものへの拒否反応ではなく、同じようなDVDを見る、という行為そのものに飽きている可能性もあります。小さい子どもは、単調な活動にはどうしても飽きやすいものです。例えば、Sing Along!でいっしょに歌をうたう、イベントに参加する、テレフォン・イングリッシュを楽しむ・・・・・・といった別のアプローチをしてみると、英語への違った興味がわいてきて、そのうちにまたDVDも見るようになるかもしれません。

また、言葉の習得に必要な「整理・調整の段階」にいる可能性もあります。英語にふれ始めて間もない時期は珍しさもあり興味をもちやすいのでスポンジのように吸収しますが、ある程度習得が進みますと、それを整理しようとする時期があり、その際一時的に英語に対し拒否反応を示すことがあるのです。そのときはあまり英語を無理強いすることは避けたほうがいいでしよう。とはいえ、まったく英語から離れてしまってはそのまま忘れてしまう可能性もありますので、さりげなくCDを流すなど、無理のないインプットを続けることは大切です。

子どもは興味のあることには自ら進んで取り組むものです。興味の対象が変わったのであれば、その対象と英語をうまく結びつける工夫をするのもよい方法だと思います。

Q:息子は1歳くらいからDWEをしています。CDを聞いたり、DVDを見たりする程度です。1歳のときは「アポウ」だったものが、3歳時に「アップル」、5歳で「りんご」になりました。このままでもいいのでしょうか? (お子さんの年齢:5歳)

A:無理に正そうとせず、正しい音のインプットを

英語の発音はとにかく、ネイティブの発音をしっかり聴かせることで磨かれます。例えば"apple"の場合、まずはこのお子さんのように「アポウ」などと耳で聞いた近似音で発音しますが、繰り返し正しい発音を聞くことによって、徐々に英語の発音に近づけていくのが普通です。最初の"a"と最後の"l"音が日本語にはない音である"apple"のように発音が難しい言葉の場合、正しい発音を獲得するにはかなりの時間と努力が必要です。一方で日本語英語の「アップル」や「りんご」という言葉を耳にする機会も増えますし、子どもの世界が広がることによって当然混乱もするはずです。いま、あえて「りんご」と言っているのは、一時的な調整状態にあるのかもしれません。そんなときは、無理に発音させようとせず、それよりもむしろ正しい音を聞かせることを心がけてください。幼児期の英語教育に大切なのは、何といっても正しい音の豊富なインプット。とにかくこれに尽きるのです。

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伊藤 克敏 先生

神奈川大学名誉教授
日本児童英語教育学会(JASTEC)顧問
英国国際教育研究所(IIEL)顧問
国際外国語教育研究会会長

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