日本人の海外留学生数は、年々増え続けています。日本人の留学先といえば、かつては当たり前のように「アメリカ」と答える人が多かったのですが、ここ数年アメリカへの留学生は減りつつあり、逆に「フィリピン」に留学する人が増えているそうです。その理由は、いったい何なのでしょうか?
誰もがアメリカ留学に憧れる時代は終わった
フィリピン留学は、安い費用で充実したレッスンが受けられる
ヨーロッパの小国・マルタなど、新たな留学先が選ばれ始めている
アイルランドの日本人留学生は、対前年比が約32%増
誰もがアメリカ留学に憧れる時代は終わった
JAOS(一般社団法人海外留学協議会)が2019年8月に留学事業者42社を対象に行った「日本人留学生数調査2019」(※)によると、日本人の留学先は、アメリカが3年連続で減少するという結果になりました。
アメリカへの留学生が減ったとはいえ、今回の調査で海外留学先の1位となったのは、やはりアメリカです。JAOS加盟の留学事業者を通して留学した80,566人(2018年)のうち、アメリカを選んだ人は17,642人と、21.9%の日本人がアメリカを留学先に選んでいます。
しかし、2017年は17,894人(22.9%)、2016年は19,024人(24.0%)という結果を見ると、確かに少しずつではありますが右肩下がりになっており、アメリカに留学する日本人が減っていることがわかります。
アメリカへの留学生が微減の傾向にあるのは、日本に限ったことではなく、世界的な傾向といわれています。その原因のひとつに、アメリカの反移民政策や外国人向けビザ発行の厳格化などもあげられていますが、実際には費用面の問題など、複合的な要因が絡んでいるようです。
※JAOSは留学事業の健全な発展と国内の留学啓蒙を目的として、民間の留学事業者や海外政府機関等の72団体で構成される一般社団法人。この調査はJAOSに加盟している留学事業者を対象に毎年行われており、大学生の他に社会人・小中高校生なども含まれている。
フィリピン留学は、安い費用で充実したレッスンが受けられる
今回の調査で2位だったのはオーストラリア(16,426人)、3位はカナダ(13,725人)でした。そして、その後にジワジワと留学生数を伸ばしているのが、4位のフィリピン(8,232人)です。
3位のカナダとはまだ5,000人以上もの差がありますが、フィリピンの前年の日本人留学生数は6,755人なので、前年に比べて約22%増という目覚ましい増加率です。この増加率から考えると、フィリピンが留学先のベスト3に食い込む日も、そう遠くはないかもしれません。
フィリピンが日本人の留学先として選ばれている理由は、留学費用が安く、日本から近くて気軽に行けるというのもありますが、フィリピンの英語環境が充実しているのも大きなポイントのようです。
たとえば欧米などの場合は、効果の高いマンツーマンレッスンを受けたくても、料金が高額なので、実際に受講できる人が限られてしまいます。そのため、留学生は1クラス15人以上の集団レッスンを受けるのが一般的です。その点フィリピンは人件費が安いので、マンツーマンレッスンや少人数制のグループレッスンも、気軽に受けられるのです。
「フィリピンの英語力に不安がある」という人もいますが、フィリピンは公用語が英語で、アメリカの植民地だった歴史もあるため、英語教育が根づいています。講師のレベルも高く、安い費用でコストパフォーマンスのいい授業が受けられるとあって、人気が高まっています。
日本から近く、費用が安く、しかもマンツーマンで質の高い授業が受けられるとなると、日本人留学生がフィリピンを選ばない理由はほとんど見あたりません。今後は"留学といえばフィリピン"という時代になっていく可能性も、十分にあるでしょう。
ヨーロッパの小国・マルタなど、新たな留学先が選ばれ始めている
前年に比べて大きく日本人留学生が増えたのは、フィリピンだけではありません。ヨーロッパの小国・マルタも、日本人留学生が増えつつあります。
2018年にマルタに留学した日本人留学生の数は1,166人。2017年が896人、2016年が790人なので、着々と増えていることがわかります。
マルタの公用語は英語なので、英語を学ぶ環境として申し分ありません。ヨーロッパで英語を公用語としている国は意外と少ないので、そういう意味でも、マルタはオススメのスポットといえます。
また、マルタは、ヨーロッパの夏休みの語学留学先としてよく利用され、ドイツやフランス、スイス、スペインなど、さまざまな国の人達と交流できるという魅力もあります。
「海外に留学したのに、結局日本人同士で固まってしまった」ということもなく、陽気なマルタ人やヨーロッパの人々と、楽しい留学生活が送れるでしょう。比較的治安がよいのも、留学先として選ばれる理由です。
アイルランドの日本人留学生は、対前年比が約32%増
マルタと同じく、日本人にとって馴染みの薄い「アイルランド」も、いま留学先として人気上昇中です。2018年にアイルランドに留学した日本人留学生の数は、783人でした。けっして多い人数ではありませんが、2017年が594人なので、それに比べると約32%も増えています。
アイルランドの人々は、とても気さくで陽気で音楽好き。地域の温かいコミュニティがあり、治安も比較的よく、現地の人々と親交を深めることもできます。
そんな楽しさがあるうえに、アイルランドは英語を学ぶ環境としても最適です。国の教育水準が高く、日本人が少ないので、集中して英語を学ぶことができるからです。イギリスより留学費用が安いのも、魅力のひとつといえます。
このように、いま日本人の留学先は定番のアメリカやオーストラリアだけでなく、さまざまな国々に広がり始めています。もしかしたら数年後には、あっと驚くような見知らぬ国も、留学先にランクインしているかもしれませんね!
まとめ
日本人の留学先が少しずつ変化し、新たな留学の選択肢が増えていることが、おわかりいただけたかと思います。
いま、社会人や小中学生を含めた日本人の年間留学生数は、20万人ほどと推定されています。グローバル社会に向けて、今後はますます増えることが予測され、それに伴って留学の内容も選択する国も、さらに多様化していくことでしょう。
「皆が海外に行くから」ではなく、自分の意志で積極的に留学先を選び、一生の思い出に残る素晴らしい時間を過ごしたいものです。