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愛に生きる

鈴木 鎮一(著)
『愛に生きる―才能は生まれつきではない―』
講談社

「ディズニーの英語システム」(DWE)とゆかりある音楽教育法「スズキ・メソード」。
今回は、スズキ・メソードを確立した鈴木 鎮一(しんいち)先生の著書・『愛に生きる』について、東京大学の早野 龍五名誉教授に解説いただきました!


長く読み継がれてきた『愛に生きる』

『愛に生きる』は、1966年の初版以来、現在までに実に95刷を重ね、子育て中の親御さんや教育関係者などに長く読み継がれています。

実は、この書評をお引き受けするかどうか、私は随分迷いました。と言うのも、以前のインタビュー()でもお話しましたように、私は子ども時代に鈴木氏に師事し、現在は鈴木氏が創設した公益社団法人 才能教育研究会の会長をつとめる立場にあるからです。加えて、『愛に生きる』には、私の小学校1年生のころのエピソードや、参加した全米コンサートツアーのことなども書かれています(こんな背景から、以下では、著者を「鈴木先生」と記しています)。
懐かしさが先に立ってしまいそうな気持ちを抑えつつ、本書で示されている鈴木先生の信念についてつづっていきたいと思います。

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生き生きとした実践例から伝わってくる鈴木先生の信念

鈴木先生は、今や世界的に有名になった音楽教育法「スズキ・メソード」を確立した教育者で、1898年に名古屋で生まれ、1998年に松本で亡くなりました。
その間、多くの一流バイオリニストを育てつつも、「音楽家を育てることを第一の目標とするのではない、りっぱな人間を育てたい」との思いから、後半生を、音楽を通じた幼児教育に捧げたことで知られています。

スズキ・メソードは、鈴木先生が「日本中の子どもが日本語をしゃべる!」という事実に驚いたことから生まれました。
子どもがいつのまにか母語を話せるようになる、そのことのすばらしさに誰も気づいていなかったのです。
鈴木先生は、子どもが周りの人々からたくさん母語を聞かされて身につけるときと同様の環境を用意することが、音楽教育でも重要だと考えました。
優れた音楽を聞き、繰り返し練習することで、音楽をはじめとするさまざまな能力を伸ばしてく「母語教育法」がスズキ・メソードの根幹なのです。

本書には、
「どの子も母語をりっぱに話せるようになる可能性を備えて生まれてきている」
「人は環境の子」
という鈴木先生の強い信念と、
「能力を伸ばすためには、急がず休まず、根気よく繰り返す」
「へたな努力をすれば、へたな能力が育つ。正しい努力を積み重ねよ」
「思っても行わなければ、思わないのと結果は同じ。思ったら行う能力を身につけよ」
などといった、子どもの能力を伸ばす知恵が、実践例とともに生き生きと述べられています。

鈴木先生が、松本で才能教育研究会を設立し、幼い子どもたちにバイオリンを教えはじめたのは戦後まもなくのことです。
その頃は子どもが楽器を習うことは珍しい時代で「才能教育=英才教育」と誤解されることもあったようですが、鈴木先生が目指したのは英才教育ではありません。
このことは、本書刊行の2年前、鈴木先生が私を含む10人の子どもたちを連れて初めてアメリカに渡った時に現地で配布された小冊子のタイトル"Every child can be educated."(どの子も育てられる)からも、はっきりと読み取ることができます。
そして「どの子も育つ 育て方ひとつ」は、才能教育研究会のモットーとなっています。

子どもの可能性を信じ、ポジティブに取り組む

最近、幼児教育への関心が高まり、幼児期に、やる気、忍耐力、協調性など、いわゆる非認知能力を育むことの重要性が注目されるようになりました。
特に、ノーベル経済学賞を受賞したヘックマン氏が非認知能力の重要性を強調したことで、この考え方が世界的に広まったようです。
鈴木先生はその半世紀以上前から「良い音楽を聴き、演奏することを学ぶことによって、子どもたちが感受性、規律、忍耐力などを身につけること、やり抜く能力を育てること」を重視していました。

それでは、幼少期を過ぎてしまったら能力は育たないのか。この疑問に答えてくれるのが、本書の半ば〈わたしの歩み〉で語られる鈴木先生ご本人の歩みです。先生が初めてバイオリンを手にしたのは17歳の時でした。決して早い時期ではありません。
バイオリン製造工場を経営していた父・鈴木 政吉氏のこと、ドイツへの留学、トルストイやモーツァルトへの傾倒、アインシュタインなどとの出会いを経て、鈴木先生が「すべての子どもがすこしでもいい人間に、すこしでもしあわせに育つようにすること」が自分の一生の仕事だと思うに至ったこと、「音にいのち在り 姿なく生きて」を座右の銘とし、人間性を高めていった過程が語られています。

本書は、音楽教育の、幼児教育の、ハウツー本ではありません。鈴木先生がどのようにして「どの子も育つ」ことを発見し「みんながしあわせになるように」という思いで実践して行ったか、その愛の記録です。
「氏か育ちか」は、古来論争の絶えないテーマであり、鈴木先生の「(生理的能力に対し)文化的能力は生まれつきでない」との考え方に、異論があることは存じています。
しかし『愛に生きる』の中で、鈴木先生が子どもの可能性を信じてポジティブに取り組む姿は、私たちに「今からでも遅くない、思い立ったらやろう」と教育への勇気を与えてくれます。

グランドコンサート

2018年4月4日には、天皇皇后両陛下ご臨席のもと、鈴木鎮一生誕120周年記念の「スズキ・メソード グランドコンサート 」が開催され、「すべての子どもに幸あれ」をテーマに、2000人の子どもたちが一堂に会してりっぱな演奏をしました。
『愛に生きる』の教えは、半世紀を超えて、今に引き継がれているのです。


早野先生近影1

プロフィール:早野 龍五(はやの りゅうご)

東京大学名誉教授。1952年岐阜県大垣市出身。世界最大の加速器を擁するスイスのCERN研究所(欧州合同原子核研究機関)を拠点に、反物質の研究を行う。2016年より(公社)才能教育研究所会長。糸井重里氏との共著に『知ろうとすること。』などがあり、福島第一原子力発電所事故に関して科学的に考える力の大切さを提唱している。

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